2016年7月11日月曜日

次の震源候補になったGPIF

2014年の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直しは本当に悪手だった。これによってGPIFが次の金融危機の震源になる可能性が高まった。

GPIFのポートフォリオは決められた資産構成を目指すパッシブ運用をしているので、高値だから売る、安値だから買うなどといった能動的な運用はしていない。代わりに、株の保有割合が下がったから債券を売却して株を買い増す、債券の保有割合が下がったから株を売却して債券を買い増す、というような運用をしている。これの何が問題かというと、GPIFのような大きな資金がこのようなことをすると、株を買うために債券を売ると債券が下がり、債券を買うために株を売ると株が下がる、といったあっちを売ってはこっちを買い、こっちを売ってはあっちを買いという負のスパイラルに陥る可能性があることだ。そのリスクが、値動きの荒い株の保有割合を増やしたことで高まったのである。

株価は今のところ均衡を保っているが、日本株の3割を持っているのは外国人。もしその外国人株主が日本離れを起こしたら、アベノミクスで起きた円安株高の資金の逆回転が起きて円高株安になる。そうなると株価下落によりGPIFの株価保有割合が下がるので、GPIFは債券を売って株を買うことになる。債券、特に日本国債市場はただでさえ日銀が国債を買い支えていて参加者が減りつつあるので、GPIFのような大口投資家が売りを浴びせたらどうなるか。スカスカの債券市場で金利が上昇し、債券価格が下落するのである。

そしてこれが最も恐ろしいところだが、債券価格が下落してGPIFの債券の保有割合が減少すると、今度は債券保有比率を上げるために株を売る必要が出てくる。あのクジラと呼ばれる大きなGPIFが株の買い手から売り手に転じることになるのだ。GPIFが株を売れば株は下がる。株の保有割合が下がれば債券を売ることになる。そうなるとまた債券が下がる。それを補うためにまた株を売る。外国人の売りの影響がGPIFによって債券市場にまで波及し、それがまた増幅され株式市場を襲う。そうして株価も債券も連鎖的に下がっていく。

その結果上がった金利のせいで国債新規発行が大幅減もしくは不可能になり、新たに借金を増やすことが難しくなる。そうすると借金返済と金利正常化のために増税と緊縮財政をせざるを得なくなる。景気は悪化し消費は鈍る。幸い日本は外国への借金は少ないので真っ当な政策をすれば大混乱もデノミもハイパーインフレも徳政令もなく、最終的には年金の減額と医療費自己負担の大幅増になりさらなるデフレが進む。人口減で需要が減るので輸出>輸入で輸出超過になり経常収支黒字は続きこれもデフレ圧力となる。需要減と慢性的な輸出超過による円高でデフレが続くも消費者不在で経済は縮小する。

金利の水準も変わり安全性も下がるので、円はキャリー通貨としての地位を失いアジアのローカル通貨になる。これらは全て金利上昇が前提となるが、もし実際に金利が上がれば起こりうる事態である。そして日銀の国債買い入れにより市場は正常に機能していないので、現在の国債市場の状況を知るのも難しく、本当に金利は上がるのか、上がるならいつどれくらい上がるのかといった予測も困難である。為替と株に関しては、データに基づき予測すると、ドル円と日経平均はそれぞれ60円、6000円までオーバーシュートし、混乱が収束したら80円、10000円程度に戻るはずである。

日本はGPIFという爆弾を抱えているということを認識して、外国人の株売りや金融不安を注視しなければならない。

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