投資といえば長期的で多くは無期限の資産運用であるが短期的な利益を狙い頻繁な売買をするのがトレードである。手間と時間をかけて売買する以上投資よりも高いリターンが必要で相場下落時でも儲けを出すことが求められる。通常はバイアンドホールドで年に数回ポートフォリオを調整していれば十分な利益が得られるのでトレードをするなら相場を監視してチャンスには大きな利益を出したい、毎月キャッシュフローを生み出したいなど別のモチベーションが必要だ。
積極的に売買益を狙い一定以上の成果を出し続けることができなければトレードはすべきでない。誰にでも向いているものではないのだ。自分で規則や期限や条件を決めて機械的に取引できることが最低条件でポジションを持っていたら不安になったり眠れなくなるような人も向いていない。トレーダーにとって好ましい資質を3つ挙げるならば私は冷静、忍耐、勇気を挙げる。
トレードとは判断をし続ける仕事だ。頭に血が上ったり冷静さを欠いていては正しい判断ができない。判断を間違えることより判断できないことが致命的になるのでわからなければ降りる勇気、いい機会がなければ待つ勇気が必要となる。条件が悪ければ辛抱強く待ち続けてチャンスと見れば大胆にポジションを取る。相場が動かなければ大きく儲けることは難しいが相場が動き出せばそれはリターンを上げるチャンスでもあり間違えた場合ピンチにもなる。レンジ相場とトレンド相場、さらには乱高下相場などトレーダーには状況に応じた判断が求められる。
さらに知識と経験がトレーダーを磨く。心理学を勉強して認知バイアスについて知り思考の偏りや自身の心理状態を把握したり統計学を学んでテクニカル分析をして市場の値動きを理解したりすれば勝つ確率を上げることができる。経験を積む上で特に意識してほしいのは逃げる力と攻める力だ。これらは2つの別の能力でそれぞれディフェンシブスキルにオフェンシブスキルと呼ぶことができるものだ。
ディフェンシブスキルとは資産を守るために必要な能力でこれを磨けば逃げるのが上手くなる。自身の精神状態を自覚する、動揺や心の乱れを自覚したらトレードしない、間違えたと思ったら損切りすることなどが挙げられる。資産防衛にはこれらに加えて読み、つまりある程度の危機察知能力が求められる。相場の下落には大抵前触れがあって上昇トレンドがある中で急落するようなことはあまりない。もみ合いや乱高下をしていたら停滞や不透明感を見極めてポジションを軽くしたりヘッジをしたりできるようになれば大きく損をする確率は下げられるだろう。
オフェンシブスキルとは機会を見つけ積極的に勝ちに行く能力でこの力があれば攻めてチャンスをものにしやすくなる。具体的には価格変動から市場参加者の心理を読み次の行動を予想して推察した市場心理を元にトレードするのがそれだ。ディフェンシブスキルが自分を知ることであるのに対してオフェンシブスキルは相手を知ることであると言える。損を避けるのと違って売買益を狙うのは予想が外れれば損失に直結するのでより慎重で大胆に決断し撤退条件を決めることや見切りも大切となる。
金融資産といっても株(現物・信用)、先物・オプション、為替(FX)、商品先物などいろいろあるのでどういった資産をトレードするかというのも重要だ。相場が動かなくても株であれば配当、FXならスワップで儲けることはできるがそれを目当てにするのはトレーダーではない。信用でデイトレードをしたりFXでスキャルピングをしたりするのも専門の機関投資家やヘッジファンドがたくさんいてHFTやアルゴ全盛の今は優位性がない。自分の手法を確立し勝ち続けるのは難しいことなのだ。
できれば大きな値動きが見込める時にだけトレードするのが理想だが毎月利益を上げたい場合はオプショントレードも選択肢に入る。オプションは保険商品で売り手は保険会社、買い手はその顧客と考えるとわかりやすい。決まった条件(行使価格)と期限があり統計学の知識さえあれば安定した利益を見込むことができる。統計学といってもアクチュアリーになる必要はなく基本的な用語や理論さえわかっていれば困ることはないだろう。
オプショントレードをする上で知っておきたいことは資産価格の変動には時間がかかるということと変化率ではなく値幅(変動幅)で見るということだ。相場の格言で上げ100日下げ3日というのがあるが実際には上げと下げでそれ程の差はない。急激な値動きということになれば下げのほうが速いが上げでも下げでも短期間に2倍になったり半分になったりはしない。時間軸が長ければ相場変動はファットテイルになるが数か月もあれば上昇も下落も同程度のものは同程度の回数起きている。日経225オプションであればSQが1か月で7000円以上動いたことはなく3000円以上動いたのも過去に3回だけだ。そういった統計を基にリスク管理をすればよい。
変化率というのは当てにならない。市場での売買代金が決まっているからだ。日本株の1日の売買代金は大体1-8兆円程度だ。時価総額は数百兆円であるので値幅はこれら2つの数字に左右される。同程度の売買代金で変動する時価総額は同程度と考えられるのだ。近年の日経平均株価の1日での変動幅は上下とも最大1500円弱程度である。そこから計算すると値幅は売買代金*150円から200円程度といえる。つまり日経平均が20000円であろうが10000円であろうが売買代金の制約がある限り1日で想定される値幅は同じということだ。なので10000円が9000円になれば変化率はー10%だがそれを当てはめて20000円の時に2000円下がるというのは考えづらいということだ。
最後にある程度の資金がなければトレードはできないと言っておく。金融商品にはレバレッジをかけられるものが多いがレバレッジは資金効率を上げるとともに単位資産あたりのリスクも高める諸刃の剣だ。レバレッジのかけ過ぎは相場急変時の破滅につながる。毎年50%や100%も稼げると思っていたら大間違いで普通は安定して毎年5-10%の利益を上げられたら優秀なトレーダーといえる。あまりにも高いリターンが続くならそれは自分の腕ではなくリスクの取り過ぎだと考えるべきだ。レバレッジを使って当たれば大きな利益になるが想定の逆になったら大きな損失になることを肝に銘じておきたい。
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