政府が賃上げ要請という意味不明なことをしているが国がすべきは雇用流動化の後押しとセーフティネットの充実だろう。賃上げは労働者が勝ち取るべきものであって国がどうにかすべきものではない。賃金上昇に必要なのは労働者の意識改革だ。
賃金は上がるものではない。上げさせるものだ。なぜこんな簡単なことがわからないのか?自動的な昇給など存在しない。なぜこれを理解できないのか?それは経営者の立場で考えれば一目瞭然だ。たとえば経営者の好意で意味もなく賃金を上げたとしよう。それは労働者にとってはありがたいかもしれないが必要のない出費は無能どころか株主利益に反する背信行為だ。株主に訴訟を起こされて当然だ。私的な使い込みと変わらないからだ。なぜ賃金を上げなければならないのか理由が必要だ。そしてその理由は決まっている。
無駄遣いを好んでしたい人はいるだろうか?お金を配って歩く人がいるだろうか?個人ならそれも酔狂で自由だが法人はそうではない。常に最小のコストで最大の利益を出すことを求められる。効率、生産性を求められているのだから当然だ。無駄はいらない。任意の昇給とは無駄以外の何物でもない。無駄な損失を好んで出す経営者がいたとしたらその会社は潰れるだろう。雇用コストを最小にするのは経営者の義務だ。賃上げをするのは上げざるを得ない場合のみだ。人材をできるだけ安く買いたたくことは企業目線では絶対的に正しいのだ。
では人件費を上げる必要がある場合とはどんな時か?それは雇用者のスキルが上がった時と必要な人材が集まりにくい時だ。日本人は奴隷根性が染みつき大人しいが海外では賃金交渉は当たり前だ。ストライキも日常茶飯事だ。日本ではこれがない。求めなければ得られることはないのにもかかわらずだ。昇給が欲しければまず賃上げ交渉をすべきだ。次に労働組合を作って団体交渉、不満があるならストライキ。それでもだめなら転職。海外の労働者は当たり前に雇用主と戦っている。日本人は法律のせいか文化のせいか交渉もストも転職もしない。現状を黙認することは今のままでいいという意思表示ととられて当然だろう。
被雇用者であれば昇給は勝ち取る。雇用者はそれを渋々認める。これが健全な市場経済のあり方だ。これが何らかの要因で妨げられているなら政府の介入が必要だろう。賃上げしてほしいなら要求しろ。待遇に納得できないならやめろ。当たり前の話だ。ところが日本では奴隷のように低賃金や無償で働きたがる人たちがいるようだ。丁稚奉公の文化の名残だろうか?嫌ならやめろが通じない世界。低賃金にしがみつく理由は人それぞれかもしれないがそれが構造的であれば問題となる。代わりはいくらでもいると言われることもあるが本当にいくらでもいるのなら個人がやめたところで解決できないからだ。
代わりはいくらでもいるのか?そこは非常に重要な部分だが必要なスキルを持った人間がいくらでもいるということはないだろう。ならばやめる人が増えれば賃金に上昇圧力がかかるのではないか?不満があれば辞められる環境。その整備は政府がすべきだ。割に合わなければ人が集まらないのは望ましいことなのだ。やめやすい環境、転職しやすい環境はあったほうがいい。賃金デフレになるのは供給過多で仕事の奪い合いがある場合のみだろう。それは労働ダンピングに他ならない。同一労働同一賃金も大事だがまずは賃金が適正水準であるほうが大切だ。
昔はきつい仕事や大変な仕事は高賃金であったが現在は不当に安くなってしまっているように思える。健全な市場を破壊するボランティアという悪で触れたことがあるが利潤を追求しないビジネスは一時的な需要にのみに限定されなければ市場を破壊する。年金があるから儲からなくていい、善意でやっているので多少の赤字は想定内。そんなビジネスがあっては困るのだ。年金受給者の労働ダンピング以外にも被扶養者のパートという問題もある。近頃騒がれている103万や130万の壁というやつだ。共通しているのは国の補助を受けて損失が補填されているという状況だ。
年金があるので低賃金の仕事をボケ防止でやる。被扶養者だと税制面で優遇されていてお得なのでとりあえず働ければいい。そんな人たちのせいで低スキル労働の賃金に下げ圧力がかかっているのではないか。安く何でもやる人たちだ。被扶養者は社会保険と年金はおろか所得税も住民税も払っていない。これがいかにめちゃくちゃなことか。主婦がバイトで100万稼いでも無税だが自営業者の配偶者は生きているだけで国保と年金で毎年20万以上とられる。これは税制の不備だ。給与所得控除や配偶者控除は廃止して基礎控除を100万(月8万円生活を12か月で96万円なので最低限これぐらいはないと暮らしていけない)など大幅に引き上げ納税も個人単位ですべきだろう。税金や社会保障で不平等が生じているのは同一賃金同一労働以前の問題だ。
労働ダンピングはさせるべきではない。働きやすいやめやすい労働市場。労働に見合った対価。報酬に見合った税金。これらを整備するのが国の仕事だ。不当な賃上げ要請に応じるような経営者は資質がない。不当な要求をするような政府には信頼がない。賃金水準が決まるのは市場に任せて不平等や悪循環が起きないよう必要な法律を作り黒子に徹するのがまともな国のすることだ。派遣の首切りや正社員の特権階級化、失業保険の不正受給など国が対処すべき課題をほったらかしにして賃上げ要請をするようなトップではこの国の労働環境がよくなるはずがない。成果主義やジョブ型雇用など制度の過渡期ではあるが表面だけ取り繕って利権保護のため都合のいいとこどり、既得権益や支配層だけが潤い現場が混乱し尻ぬぐいをするような労働者のことを考えない規制や制度は変えていってもらいたい。
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