日本の少子高齢化は手遅れでなんとかなる時期はとっくに終わっている。何故それを認められないのか?問題を正しく認識できなければ対処もできない。すべきことは問題解決ではなく敗戦処理だ。実現不可能な夢を語るのはやめて合理的な対応をしてもらいたい。
政府は少子化対策と称して子育て支援をやろうとしているが問題はそこではない。生むことと育てることは別で危機的状況なのは育てるほうではなく生むほうだ。そして生む機械でも実用化されない限り出生数の問題は解決不可能である。少し計算ができるなら人口動態と出産可能年齢からわかることだ。出産可能年齢を伸ばせる可能性はあるが不老となればそれは新たな少子化の種となりかねず少子化解決とはならない。目をつぶっても問題はなくならない。それを理解しなければ建設的な話はできない。
日本において必要なのは婚姻数を増やすことだ。なぜなら婚姻者の出生率はここ数十年あまり変わっていないからだ。結婚したら平均して2人の子供というのが統計的な数字だ。人口を維持するには8割が結婚し平均2.5人の子供を作ることが必要だ。そうすれば出生率は2となる。2022年は出生数が80万人割れと少子化が加速したがこれはもっと進むと考えられる。個人的な印象としては6割が結婚し平均2人の子供を作るという時代になっていくのではないかと思う。出生率は1.2だ。結婚が7割としても1.4でいずれにせよ日本の人口は1世代ごとに6-7割に減っていくものと考えられる。
40年で6割を2回経れば2100年すぎには人口は現在の36%という計算になるが実際は全年代ではなく現在の若年世代の3-4割になると推定できる。4000万人といったところか。何も難しいことはない。生物学的に決まっていることから計算すればそうなるということだ。これを覆すには完全な人工出産しかない。だが子供を産業的に生産可能となった場合は遺伝子的な選別や誰が育てるか、育児費用など別の問題が出てくる。倫理的問題もありこの方向へ向かう可能性は低いとは思うが可能性としては存在している。世界では人口は増加しているので食料や水、エネルギーの取り合いにもなりかねない。となると最終的には希少資源の最適配分という経済学になってくる。結局のところ目標設定をするには合理的思考が必要だということだ。
話を戻そう。出生数を増やすにはどうすればということだが、これは結婚を増やすか世帯あたりの子供を増やすかということになってくる。3人目を欲しがってもらうには年齢と経済力の壁がある。晩婚化が進んでいる現在3人目が生物学的に可能かというのがまず一つ、その上で育てる気力と経済力があるかという環境の問題、さらに高齢出産ともなれば先天性障害のリスクや不妊治療などほかの問題もある。初婚年齢は30歳前後となっているので時間的余裕はあまりない。この何十年婚姻世帯における出生率は大きく変わっていないので子育て支援で少子化対策というのは無理がある。つまりそのアプローチは間違っているということだ。
となると結婚を増やすのが少子化対策となるがこれはそう単純ではない。若者の貧困化、晩婚化、非婚化は進んでいるがその原因は複合的でどう対処していくかは難しい。男性の年収と婚姻率には相関があるようなので若年世代の収入を増やすというのは一つの手だが、先進国で軒並み少子化が進んでいることからこれが決め手とはならないだろう。貧乏子だくさんは過去の話で、子供が労働力とならない先進国では低収入で子供がたくさんいればより貧困に苦しむだけだ。抽象的ではあるが結婚したいと思えるかどうかというのが根本的なことで、そう思わせることができれば少子化対策の一助となるだろう。
これに取り組むには逆説的になぜ人は結婚しなくなったのかを考えるとよい。大雑把に言えば文化水準、教育水準、女性の社会進出とそれに伴う考え方の変化が要因と言えるだろう。単純作業の需要が減り労働に求める能力が高くなり子供は産めばいいというものではなくなった。結婚に対する社会の見方も変わり結婚しなければという義務感も減っている。若い間に十分な収入と明るい経済的見通しと理想の相手。これらの高望みが普通とされてしまって求めるものが高くなりすぎた。娯楽も増え生き方も多様化して自分が結婚しなくてもという意識の変化。急速に少子化が進む中で若者の将来の負担は計り知れないほど増えている。子供は贅沢品。遺伝子を残すというエゴのために地獄に生み落としていいのか?様々な考え方や社会構造によって少子化は進んでいく。
過疎自治体が子育て支援で出生率V字回復などと言っている事例はあるがお金に釣られてきた夫婦は利益がなくなればまた引っ越すフリーライダーである可能性が高い。子供に必要なのは教育と仕事だ。のんびりした環境を求めてなどと言って田舎に来る人もいるかもしれないが外部の情報がいくらでも入ってくる中でいい大学も就職先もない過疎地に子供をつなぎ留めておくことは難しいだろう。地方で一番必要なのは雇用の創出なのだ。仕事があれば人が集まる。子育て世帯を集める政策は結局は自治体の金を使ったバラマキでしかなく他所から付け替えただけで日本全体で子供が増えるわけではない。
独身者に罰金や結婚の義務化、堕胎の禁止など人道的に問題のある過激な政策を主張する者もいるが彼らは前提からして間違っている。先進国が欲するのは高度な技能を持った労働者、多額の税金を継続的に納めてくれる納税者であって頭数ではない。子供を増やしたら賞金などの政策で数だけを増やしたとしても技能のない労働者の需要は多くない。数が絶対的な力であるならばインドや中国はとっくに世界一になっているだろう。質の高い教育を受けた高度な技能を持つ人間を育てるのは難しい。教育に理解のない早婚で低収入の世帯が増えても貧困の再生産が起きるだけだ。ただ子供を増やせばいいということではないのだ。
少子化は避けられない。ならばどうやって社会を維持していくか。人口ピラミッドをどうすべきか。それらを考えていく必要があるが日本は周回遅れで少子化対策と言っている。大きく穴が開き沈んだ船でどうやったら船が沈まないか議論している。船は沈んでいるのだ。崖から落ちそうなのではなく落ちているのだ。その現実から目を背けている限り事態は悪化していく一方だ。末期患者の緩和ケアの話をすべき時に初期治療の話をするような頓珍漢なことをしている限りこの国の将来は暗くなり続けるだろう。
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