人間の数とはすなわち国力なのか?人口が減り続け高齢化も進む日本の経済はどうなっていくのか?OECDによる日本の人口予測を用いて将来の日本のGDPをモデリングする。
OECDによる日本のGDPデータは1994年からで期間が短いので、内閣府発表の平成17年基準支出系列簡易遡及と国民経済計算(GDP統計)を合わせて利用する。まず単純に人口とGDPの推移を並べてみる。
人口が安定して推移しているのに対して、GDPは急激に伸びていて一見関連性は低いように思える。そこで、 コブ・ダグラス型生産関数という生産要素と生産物の関係を表す関数を考えてみる。 コブ・ダグラスはY=A*K^a*L^bで表される関数でそれぞれYは生産量、Aはマルチファクター生産性(MFP)と呼ばれるスケール係数、Kは資本、Lは労働を意味する。aとbは資本分配率、労働分配率と呼ばれ資本と労働の生産量に対する効率を表し、入手可能な技術により決まる定数である。特に大事なのはMFPで、資本と労働で説明されるもの以外の全てはこのMFPに集約される。MFPはOECDが発表しているが、指数のデータは1994年以降なので同じくOECDが発表している1985年以降のMFPの成長率を合わせて使用する。
ここでモデルを単純化するために、2つ大胆な仮定をする。1つ目は資源は有限で一定という仮定。これにより、K^aは定数となる。2つ目は労働は人口に比例するという仮定。そうするとL=d*Popとなり労働は人口(Pop)の関数となる。働き者であるほど係数は上がるので、dはdiligence(勤勉さ)の頭文字をとった。bも定数なので、dの中に含めてしまう。まとめると、Y=A*d*Popという式が導かれる。入手可能なデータを用いてd(PopAll)=1/25、d(Pop15-64)=1/17とすると、下のようになる。
参考までに名目GDPも載せていたが、物価が3倍になっても人は3倍にはならないので実質を使うのが正しい。全人口と生産年齢人口を使ったものでは、全人口のほうがより実質GDPをうまくモデリングできている。実質GDPと比較するためのdとPopが得られたので、あとはマルチファクター生産性を推定する。GDPの急激な上昇は大抵生産性の向上によるものなので、MFPの伸びをどう推定するかで大部分が決まる。下図のように、MFPはバブル崩壊後の1991年まで高い伸びを示した後は、平均すると年1%程度の伸びを示している。
日本は成長を終え成熟した国なので、今後生産性の大きな上昇は期待しにくい。そこで、MFPの成長率を1%、0.5%、0%の3パターンで設定する。最新のA=MFPが2014年の101.8でこれに成長率をかけていく。Y=A*PopAll/25に全てを代入することで、実質GDP予測が得られる。下図である。
日本の実質GDPはMFPが1%成長を維持できるなら今後もプラス成長が見込める。0.5%だと、緩やかに減っていく。ゼロ成長ではさらに落ち込みがひどい。MFPはバブル崩壊後からは多少の上下動はありながらも概ね1%弱で推移しているので、今後もある程度の成長は見込めるだろう。なので、日本の実質GDPはMFPの成長率が0.5%-1%、つまりグラフの黄緑と紫の間になると予測して結論としたい。
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