2016年7月17日日曜日

空売り集計を読む

東京証券取引所発表の空売り月間集計から3つのチャートを作成し、それぞれどのような利用価値があるか考える。

空売り月間集計は主に4つの数値からなる。月間の実注文、空売り(価格規制あり)、空売り(価格規制なし)の売買代金とその合計である。実注文とは現物売りのことで、現物で保有されていた株がどれほど売却されたかがわかる。空売り価格規制とは51単元以上の空売りを行う場合に価格の制限がかかるものだ。小口なら規制なし、大口なら規制ありと考えればよい。合計とは現物売り信用売りを合わせた合計額のことで、月内に出た売り注文の総計である。まずは実注文と合計を組み合わせてみる。

これを見ると、この2つの指標は相場の動きとある程度連動していて、マーケットの活況具合を示していると見ることができる。合計と実注文が少ない時は相場は閑散としていて株価も安く、買いの仕込み時と言える。2002年から2005年までと2009年から2012年までの間がそれに該当する。逆に売買代金が膨らんでいる時は相場が過熱状態で、株価も高値になっているならばそれは売り時かもしれない。チャートをよく見ると相場の下落時には合計より実注文の落ち込みのほうが大きいので、ここに目をつければ新たな指標に出来る可能性がある。2013年後半から実注文が合計に対し少なくなってきている。これをグラフにしたものが、次の空売り比率である。

空売り比率は相場でもよく言及される指標だが、株価との関連は薄い。2003年9月に30%程度だった比率は、2006年1月まで下がり続けた後は上下動を繰り返しながらもじりじりと上昇を続け、アベノミクス初期に一時期落ち込んだもののその後も上昇を続けている。そして今や15-30%ほどで推移していた空売り比率は常態的に30%を超え、40%すら超えることもある。株価の急騰急落時に多少の逆相関が見られることはあるものの、少なくとも月間の空売り比率からはそれ以上何かを見出すことは難しい。ただ、何故空売りが増え続けているのかという原因に迫ることができれば重要なデータとなり得るはずだ。誰が何故どのような理由でこれほどの空売りをしているのか?その主体を突き止めるのは難しい。

これは仮説だが、2013年11月に空売り規制が緩和されていて、それに伴い投機的取引やレラティブバリュー取引が増加しているのではないか。考えられるのが、例えばPERが高い株の空売りを増やしたり、高PERの構成株を売り指数を買うなどといった取引だ。それならば、株価推移と関係なく空売り比率が高いのも納得がいく。一つだけ確かなのは、空売りした株はいつか買い戻さねばならないということだ。次に空売り比率が下がった時に市場がどうなっているのか非常に興味深い。

最後にグラフ化したのが、規制ありとなしの空売りをまとめたものだ。規制ありの空売り、つまり大口の空売りが増えるということは、規制を受けてでも空売りをしたい、という高騰した相場にあることを意味する。平時には規制なしと同程度の規制ありの空売りが増えた時期を見てみると、2006-2008年と2014年以降とマーケットのサイクルと一致している。大相場の到来と終了を示唆しているとも言えるだろう。相場の天井はわからないにしても、上昇の開始と下落の終了が多少のラグこそあれわかるのはアドバンテージになるだろう。

このように、空売り月間集計を3つのグラフにすることで、相場状況やサイクルを知り未知の現象を推察することができる。同じデータでもその読み方や活用方法は様々である。

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