2016年9月29日木曜日

2016年末にかけてのマーケットの波乱要因

大きく荒れた2016年前半とは打って変わって7月以降は凪相場が続いている。利上げを渋るFRBや緩和を続ける日銀やECBが下値を支えリスクや悪材料は無視して好材料のみに都合よく反応しているマーケットを脅かすかもしれない潜在リスクを6つ挙げておく。

まず期日が決まっていてわかりやすいのが2016年11月8日に予定されている米大統領選だ。クリントン氏勝利なら大きな政策変更はなく現状維持、トランプ氏勝利なら政策の不透明感からリスクオフとされている。次期アメリカ大統領が決まるまではよほどのことがない限り市場は動かず無風状態が続くだろう。ちなみに米大統領選があるとその前年から選挙前にかけて株が強いというアノマリーがあるが真に受けるほどのものではない。

それからもう一つ期日が決まっているのがFOMCだ。残りの会合は11月2日と12月14日だが大統領選前に利上げはしないと思われるのでもし11月利上げなら混乱必至だ。地ならしが進んでいる12月利上げだが実際に利上げが行われるとどんな動きが起こるのかは不透明でわかっていたことなのにいざ利上げがあったらそれから慌てだすこともあるかもしれない。

日本株に大きな影響を与えうるのが為替動向だ。2016年6月時点での日銀短観による2016年度の企業の想定為替レートは111円で現在の100円台前半のドル円とは大きなかい離がある。内閣府が2016年2月に公表した輸出企業の採算レートは103.2円でありそれが変わっていなければ輸出企業は採算割れで減益となる。数年程度なら経費削減や為替予約など企業努力で耐えられるかもしれないが為替がこのままやこれ以上円高になったりすれば遅くとも今年度決算が出る来年6月までには為替の影響が出てくるだろう。

今後が不透明で潜在的に大きなリスクとなっているのが日銀の政策変更だ。日銀は9月の会合で年間80兆円という量の目標から金利をターゲットとしたイールドカーブ・コントロール(YCC)を導入した。これはフラット化したイールドカーブを立たせる(スティープ化する)のが目的だが上がった金利は下げられても下がった金利を上げることはできず実効性に疑問が持たれている。金利が急上昇した場合も青天井で買い支えることになるので日銀が大損することになりどちらにせよ日銀は追い詰められている。

日本ではないが同じようにシステミックリスクが高いのがドイツ銀行の制裁金問題だ。ドイツ銀行は住宅ローン担保証券の不正販売で米司法省から140億ドルの制裁金の支払いを迫られている。この巨額の制裁金はドイツ銀行の支払い能力を大きく超えており誰もが減額されると思っているがそうならなかった場合金融システムへのダメージは甚大だ。ドイツ銀行はデリバティブ取引で業務を拡大し現在もレバレッジが高く不良債権増による採算の悪化も懸念されている。

最後にもう一つ目が離せないのが原油価格の動向だ。OPECの非公式会合で生産調整が決まり減産合意がなされたとの報道で市場はリスクオンムードになっているが正式な合意は11月の総会でしかも減産の原油価格に与える影響も不透明だ。そもそも経済の停滞で石油の需要が伸びておらず原油価格が上がれば米シェールガス業界にも再び競争力が出てくる。制裁を解除されたイランもここぞとばかりに石油を供給するかもしれず価格を高く保つより安売りしたほうが利益が多くなるかもしれない。過剰供給が解消されたと言えるようになるまでは不透明な状況は続くだろう。

以上の6つが目に見えているマーケットのかく乱要因だ。予期できない突発的なイベントや細かなリスク要因はたくさんあるが現在の市場の大きな関心事はこういったものだろう。

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