今後考えられる為替水準とそれを元に算出した株価水準を用いて近い将来に見込まれるGPIFの損失額を試算した。
上記のデータはGPIFのサイトから取得した。わかりにくいがGPIFには別運用の年金特別会計がありサイトの運用資産額には約5兆円の年金特別会計は含まれていない。一方資産構成割合は年金積立金全体での割合でこちらは年金特別会計も含まれる。今回は年金特別会計は考慮しなかったので多少の誤差がある。
為替水準については現在100円台前半で推移しているが消費者物価や購買力平価から見ると80-90円程度が適正なので100円から10円刻みで60円までの5つのシナリオで試算した。海外資産を100%USドルで保有していると概算し6月末のUSドル円レートの103.25円を基準として使用した。国内株価は6月末の日経平均15575.92円を基準とし評価にはUSドル円と日経平均の関数f(USD)=200*USD-6000を用いた。結果が以下である。
日銀のETF買い入れにより株価は高値圏を維持しているが為替が100円程度なら会社の売り上げが急に20%増えない限りいずれは14000円台が心地よくなるだろう。金融危機ではない株価が是正されるだけのケースでも4.2兆円の損失が出る。株価に加えて為替も90円まで修正されると損失は12兆円まで膨らむ。控えめに見ても適正水準はこれぐらいでここまでは確定事項と考えてよい。1ドル80円を適正とすると損失は20兆円だ。金融危機が起きた場合オーバーシュートすることを考慮すると一時的には28兆円、瞬間的には35兆円程度の評価損が発生してもおかしくない。
ここまでが国内株式と海外資産の為替評価で実際にはリスクオフが進めば外国株も下落するので外国株式の下落による損失も試算する。2016年6月末を100として10%刻みに40%までの下落を試算した。ダウ平均で言えば18000ドルから40%下落すると10800ドルなので金融危機が起きればこの水準は十分に考えられる。10%下落で2.8兆円、40%下落なら11兆円の損失になる。ダウ平均の予想PERは現在18程度でこれが16まで修正されると約11%の下落になる。低水準の14になるなら22%の下落だ。10%下落をメインシナリオとすると2.8兆円の損失は既定路線で金融危機なら一時的には11兆円超の損失が見込まれる。
ここからは想定になるが出口戦略のない大規模金融緩和と金融危機の組み合わせによって通常はリスクオフで値上がりする債券価格が金利の暴騰により下落する可能性がある。国債市場のメルトダウンだ。保有債券を全て10年物国債とし現在の金利を0%と仮定して将来の金利を1%と2%(2000年代前半以前の金利)と10%(日本国債が信用を失い新興国並みの金利になったと想定)で試算すると損失はそれぞれ4.8兆、9.1兆、31兆円となる。国内債券は満期まで保有すれば損失にはならないのでGPIFが債券を持ち続けることも考えられるがポートフォリオのリバランスには苦労するだろう。
まとめるとドル円が90円で外国株が10%下落する控えめなシナリオで損失は14.8兆円、為替80円と外国株20%下落の保守的なシナリオで25兆円、金融危機で市場が大混乱しオーバーシュートすれば瞬間的に35.9兆円から46.5兆円になる可能性がある。さらに債券のメルトダウンがあれば追加で4.8兆円から9.1兆円、日本国債がジャンク扱いになれば31.2兆円の損失が見込まれる。十数兆円から20兆円強は既にないものと考えて市場の混乱時には40-50兆円、最悪のケースでは80兆円弱かそれ以上の損失は覚悟しておかなければならない。もちろん国債市場に大打撃となれば日本国経済は緊急事態に陥り日銀や政府も何らかの対策を打つだろうがそうなった場合もう日本は現在の形ではなくなっているだろう。
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