2016年9月7日水曜日

三人寄れば文殊の知恵 予測市場の面白さ

みんなで集まれば賢くなれるのか?集合知を用いて物事を予測する予測市場について考える。

予測市場とはその名の通り物事がどうなるのかを予測する先物市場で、条件と期日さえ決めればどんなものでも商品にできてしまう自由度の高い市場だ。天候デリバティブという商品は実際にあるがこれは悪天候のヘッジが目的で、予測市場なら例えば明日この場所で雨は降るか?のように0か1で答えられるバイナリオプションのようなものとなる。未来にある出来事が起きる確率はどれくらいかという推定に使われている。ブックメーカーが仕切る相対取引であることも特徴だ。

そんな予測市場だが今年は2つの大きな失敗をしている。一つはミラクルレスターと呼ばれたサッカー日本代表岡崎選手が所属するイングランドプレミアリーグのレスターが優勝したことだ。イギリスのブックメーカーは何でも賭けにしてしまうことで知られているがこれは予測市場の一種だ。特にスポーツの賭けは盛んに行われている。レスターの開幕前の優勝オッズは5000倍と言われていた。これはレスターが優勝する確率は1/5000という意味で実際はあり得ないと思われていたのでオプションなら屑プットを買うようなものであった。だがレスターは優勝してしまいブックメーカーは多額の損失を被ることとなった。

もう一つの大きな失敗はブレグジットだ。こちらは意外と言えば意外だが世論調査では常にEU離脱反対派は賛成派と拮抗もしくは優位という結果が出ていたのにブックメーカーはこれを織り込むことができず結果的に大外れとなった。これは予測市場が金額ベースの相対取引であったことが影響している。実際には拮抗していたにも関わらず金融市場には「どうせ残留するだろう」と決め打ちするような空気がありブックメーカーでも「どうせ残る」と残留に賭ける金額が多かったためこのようなことが起きた。市場参加者の偏りが予測を歪めたのだ。

このように予測市場にも限界があり市場は間違いを犯す。よく言われるマーケットが不正確になる原因としては参加者の多様性がなくみな同じ意見であったり情報が隔絶されていて参加者同士のコミュニケーションが取れなかったり便乗するだけの人が多過ぎたり流動性がなかったりバブルが起きていたりヘッジ目的の参加者が増え過ぎたりなどがある。多くは他の市場でも起こりうることであり予測市場が特別なわけではない。

今年はもう一つ面白そうなイベントがある。それはアメリカ大統領選挙だ。世論調査ではどちらも40%半ばでクリントン氏が数ポイントリードであったり拮抗したりしている。少数ながらトランプ氏リードのものもありクリントン氏が大差をつけてリードしているようには見えない。にもかかわらず予測市場では大統領になる確率がクリントン氏は70%トランプ氏は30%となっている。この世論と市場のかい離が先のブレグジットのごたごたと非常に似ているのだ。金融市場は自分に都合よく情報を織り込むのが好きで非合理的な反応が続くことも多い。世論調査を無視して次期大統領はクリントン氏とマーケットが決め打ちしているのでもしトランプ氏が大統領になれば市場は間違いなく混乱するだろう。

予測市場をもっと楽しむにはいろいろな予測市場について知っておくとよい。予測市場は大きく分けるとスポーツ、政治、企業という3つの分野でよく利用されている。一番市場規模が大きいのがスポーツで競馬競輪競艇は実はその一種だ。サッカーくじも含まれる。人間には予想を当てたいという本能があるようでスポーツでの予測市場の裾野はとにかく広い。スポーツベッティングはイギリスのブックメーカーが強い。政治分野では選挙結果予想が主だ。この分野はアメリカでも関心が高くPredictItが有名だ。Intradeというサイトもあったが潰されてしまった。予測市場は国によってはギャンブル扱いで違法であったりするので実際に取引してみたい人は注意が必要だ。3つ目の企業分野は色々応用が出来て可能性が多い。社内で用いて売り上げ予測をしたり生産管理をしたりプロジェクトを選んだりできる。アメリカではこの応用が進んでいてGoogleにMicrosoftにGE(ゼネラル・エレクトリック)といった名だたる大企業が社内で予測市場を使っている。映画の興業収入や売れる映画選びなどハリウッドでも利用例がある。

2つの失敗と3つ目の候補があり今年は予測市場的に面白い年である。予想を純粋に楽しんだり大きなイベントを予測市場の視点から見てみたり会社で活用したり予測市場には大きな可能性がある。もう少し大きな観点から見れば予測市場は集団の発生や意見の集約などの関連分野も多い。例えば政治なら個人の集まりが社会となり世論を形成する民主主義は集団的知性に頼った統治と言える。集団心理やインターネットや大数の法則など情報処理や統計学にも通じるものがある。この分野をもっと知りたいと思う人は『「みんなの意見」は案外正しい』という書籍がいい入門になるだろう。

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