お気に入りのアナリストのコラムを2つ紹介する。
JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・市場調査本部長は私の好きなアナリストの一人だ。彼は良い着眼点でデータに基づき合理的な説明をしてくれる。アナリストの仕事は未来を予測したり相場を当てることではなくマーケットを分析することだ。何が起こっていて何が起こりそうかという点を提示するのが仕事でいつ起こるというのがわかればそれは予知であってアナリストの仕事ではない。
佐々木氏はコラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション=佐々木融氏で何故有事に円が買われるのか説明していて要約すると円買いには3段階あって投機的な円買い、短期的な円売りポジションの巻き戻し、本邦企業・投資家による海外投資のヘッジやリパトリであるとしている。有事があるとます投機筋が先回りして円を買い、より事態が悪化すると円キャリーの投資家が買い戻し、最終的には日本人・日本企業が海外投資を引き上げるという順番だ。
この前提には普段は常に円が売られているというのがあって金利が低く流動性のある日本円は平時には売りが溜まっていくのが普通だ。相場の格言に上げ100日下げ3日というのがあるが本来これは株式市場で言われているものだ。それが時間軸は違うにせよ為替市場でも使われているのは円が株のような動きをするからに他ならない。売られて売られて売られて買われるのが円なのだ。
このメカニズムがわかれば円が買われるのは安全資産への逃避ではなく単なる買い戻しというのが理解できるだろう。円を買っているのではなくて売っていた円を買い戻しているのだ。経済構造的にも日本企業の対外投資は発生しやすく株アレルギーが多い日本人も何故か外貨預金などはやっていることが多い。そこに海外投資家のキャリートレードも加われば円ショートは積みあがっていく。
円の水準についても面白い考察がある。よく何年前は何円だったから今は円高だとか過去の水準に囚われている人がいるが日本はインフレしていなくても海外は物価が上がっているので仮に適正レートというものがあるとすればそれは少しずつ円高方向へシフトしている。為替レートは二国間の物価水準だけでなく政策によっても決まる。その話をしているのがコラム:なぜドル円だけが3桁なのか=佐々木融氏だ。
元々1ドル=1円だった円が戦前のヘリマネ的政策によって暴落しその後国債の発行を急増させ戦後の財政悪化によりハイパーインフレに悩まされた結果360円になったというのが佐々木氏の主張だ。過去の通貨価値暴落を指摘することによって日本の財政問題への楽観論に釘を刺している。日銀が大規模金融緩和を続け政府が借金を増やし続けるのが危うい道なのは間違いない。
こうしてみると円を保有していることが本当に安全なのか甚だ疑問に思えてくる。円は買われるのか売られるのか?経済環境だけでなく歴史から学び財政状況や政治も考慮した投資をしたい。
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