2020年3月6日金曜日

ゾンビ化する世界経済 低成長社会へようこそ

世界が日本に追いついた。資産バブル、無限の金融緩和、積み上がる債務残高。これらは日本が30年前から経験してきた低成長のレシピだ。当時はJapanification=日本化と揶揄され半分笑い話であったが世界の日本化は現実となりそうな気配だ。これは各国の中央銀行が経済の持続的発展を犠牲にして市場の味方をし続けてきた結果であろう。果たしてゾンビを退治できる国はあるのだろうか?

日本は先駆者だった。高度経済成長の後に実体のないバブルを膨らませ、弾けた後は金融緩和。最近はMMT理論なるものまで出てきているが政府が民間に代わり投資をしたところで非効率で需要がなければ無駄にリソースを消費するだけになる。日本化を起こすのは簡単で、意味もなく金融緩和を続ければよい。資産価格は上昇し、債務も増え続ける。一見平和で心地よく、政策がうまくいっているように感じるのでここから抜け出すのは至難だが、これをやめなければ将来の成長はなくなるだろう。アメリカですらこの沼から顔を出すのが精一杯で、逆戻りして沼に沈むのも時間の問題だろう。

なぜ金融緩和がよくないのか?それは淘汰のメカニズムを阻害するからだ。効率が悪く生産性の低い企業は本来なら清算させて他の有望な事業にリソースを割くべきだが金余りを常態化させているとこれが行われない。この話題は健全な市場を破壊するボランティアという悪でも書いたが問題の本質は外部からの介入によって市場が変質してしまうことだ。低金利での貸し出しが当たり前になるとそれを組み込んだ市場ができあがってしまう。点滴を打っている企業が当たり前でそうしていない企業が不利となるためにゾンビのほうが生存適性が高くなってしまう。

こうなってしまうと健全な企業は消え失せ、緩和的な金融政策が永続することを前提とした「ゾンビ企業」だらけになってしまう。リストラという言葉が解雇と同義のようになって久しいが本来のリストラは再構成、配置転換という意味で不採算事業から撤退して利益の見込める別事業に資源を投入することを意味する。企業の倒産は当事者には痛みを伴うが長い目で見れば生産性を上げるチャンスでもあるのだ。潰れたということは経営体力がなく生産性が低かった、対価に見合った価格でなく需要がなかったということだ。

成長と生産性は切っても切り離せないもので、生産性を高めることができなければ成長することはできない。生産性を高めるには非効率を切り捨てなければならないが政治家は責任をとりたくないのか企業の延命措置をしてゾンビ化を推奨するばかりだ。ダメな会社はどんどん破綻させると同時にセーフティネットを充実させ再チャレンジしやすい体制を整えて起業を推進するのが正しい政策であるがこれができている国はないと言ってよいだろう。

世界がゾンビ化する背景には格差の拡大があるのだろう。階級が固定化され現状維持を目指すようになった。富の再配分ができていないことが根本の問題だろう。新型コロナによる休業補償を見てもわかる通り日本は貧困層からとったお金を富裕層に配るという格差を助長するための政策をたくさん行っている。自営業や派遣社員など休業が即無報酬に直結する立場の弱い人たちから巻き上げた雇用保険などの税金を働かなくてもお金が入ってくる正社員に配るなど反社会的ですらある。不平等がまかり通る社会では活気が失われる。足りないのは社会に活力を与える政策だ。

健康に価値を持たせるべき 今すぐにできるベーシックインカムにも書いた通り、今の日本社会で最大の問題は高齢者につぎ込まれる社会保障費だ。彼らの医療費負担割合を上げればベーシックインカムすら可能だ。BIのある社会は楽園でもなんでもなく、もし失業しても明日困ることはないだろうといったレベルのものになるだろう。富の再配分を行うにあたってベーシックインカムは公平かつ費用がかからない実行しやすいものだ。壊れかけの資本主義を補完してくれる存在でもある。

社会の混乱を避けるために失業、倒産の回避を目的としてしまうと長期的には生産性が下がり持続的成長に悪影響を与える。世界がそちらへ向かって突き進んでいる今、適切な投資先を探すことは難しくなってきている。低成長時代のリターンは平均を下回るものとなるだろう。「潰して次へ」ができる国が強い国と言える。紙の書類やFAXが未だに使われている日本など論外だが、実際には合理的に効率化を進められて有望な事業に適切に資本を投下できる国は多くない。やはり消去法的に選んで米国ということになるだろうか。資産配分の悩みは尽きない。

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