2020年2月26日水曜日

簡単なことほど難しい 実行可能なコロナ対策は

新型コロナウイルス感染症が日本でも流行しているが政府の対応は残念な限りである。交通機関の閉鎖など有効だが実行不可能なこともあるのでできることをできる範囲で行い、この機会にウイルス感染症に対する正しい対応をもっと啓蒙すべきだろう。

ウイルス感染症はウイルスが目や鼻、のどの粘膜に侵入することで起きる。直接的にはウイルスが付着した手で顔を触ったり飛沫を吸い込んだりすることが原因だ。手洗いの有効性はエビデンスがあるがうがいやマスクの予防効果はエビデンスがない。WHOが予防目的でマスクをすることを非推奨としているのもそのためだ。しかし日本では健常者がマスクに殺到し、せきやくしゃみをする人をつるし上げるような空気になっている。こういう時にこそ政府が「マスクに予防効果は認められていないので一般人は購入を控えてほしい。」と発信すべきではないのか。

病人以外でマスクを必要としているのは免疫が弱いなど重症化の恐れがある人や不特定多数の人と接する人などだろう。病院関係者や運転手、サービス業従事者がそれにあたる。彼らが感染していると拡散のリスクが高いため、それを防ぐためにマスクをするのだ。マスクをする目的はウイルス拡散の防止であって自身が感染を予防するためではない。予防をしたいのであれば自分でマスクをするよりせきやくしゃみをしている人にマスクを配るほうがよっぽど効果的だ。買い占めて自分でする非合理はやめて、かばんに忍ばせて必要な人に配る「マスク配ろう運動」でもしたほうがましだ。

一番簡単な感染症予防対策は移動制限であるが日本では人権と法整備の問題で無理だろう。封鎖は現実的でないのだ。だが入国制限や一部フライトのキャンセルは可能だったはずだ。経済面を優先しすぎたために初期対策が行われなかったのは今後検証すべきである。ダイヤモンドプリンセス号のような集団感染の恐れがある場合は、全員を下船させ隔離し感染の拡大を阻止した上で一定期間経過後に検査をして陰性なら解放ということができただろう。船内待機では感染防止ができず感染者を増やすホットスポットとなることは容易に想像できた。下船者への風評被害を避けるためにも下船後の隔離は必要だった。

感染のリスクを考えると電車・バスや狭いオフィス、学校のような閉鎖空間が高リスク、病院・飲食などの座る場所があって不特定多数が出入りする屋内施設が中リスクになるが公共交通機関や道路を閉鎖したり長期の学級閉鎖や操業停止は難しい。それらは集団感染が確認された場合にのみすべきでそうでなければ費用対効果が悪い。一方、スタジアムや広場などの屋外で濃厚接触が繰り返されるリスクはそれほど高くないのでそちらは神経質になりすぎではないかと思う。もちろん感染の可能性はゼロではないし往復の交通機関といった問題もあるが、感染の予防というよりは主催者が叩かれないためのアリバイ作りという側面のほうが大きいだろう。

マスク不足やイベント自粛の対応を見ても、日本人は合理的な考えができずリスクを評価するのが苦手だということがわかる。そのせいか責任逃れのための免罪符が大好きだ。マスクをしてたから自分は悪くない、イベントは中止しておけば責任は問われないといった「対策してますよ」ポーズさえすれば乗り切れる国家なのだろう。この点中国のように権限的な制約が少ない国家ならば街ごと封鎖するという一番有効な対策ができるし、アメリカのように合理的な国家ならば費用対効果の高い対策だけをして後は自己責任ということである程度経済的損失を抑えられるだろう。

もう一つ、日本には風邪で病院を受診するという悪しき風習がある。そもそも、風邪を治す薬はない。症状がつらい場合に緩和ができるというだけでウイルスを退治できるのは自身の免疫だけだ。特効薬があるウイルスが特別とも言える。風邪なら自宅で安静にしているべきで、外へ出てウイルスをまき散らして診断をもらいにいく必要はない。しばらく症状が治まらず、別の病気が疑われたり重症化しそうなら病院へ行くべきだが、ただの風邪で病院に行くのは自己中心的ですらある。寝ていれば治るものをわざわざ出歩いてウイルスを広めて回る、その行為は正しいものなのか考えてもらいたい。

むやみに病院に行かないというのは人に移さないためにも人から移されないためにも有効なのだ。病院を受診してもできるのは検査だけで、検査したところで治せるのは自分だけだ。しっかり休む以外に治療法はないのだ。感染を心配するあまり病院をはしごして検査を頼んで回るような人がいるがもし彼らが陽性であれば彼らはウイルスをばらまく加害者だ。検査して陽性だったところでそれに効く薬はない。安静にしているのが根本的治療で、重症化したら点滴や解熱剤、さらに必要なら呼吸器を付けるというのが対症療法だ。必要がないのに病院へ行くことは自身と他者への感染リスクを上げ、病院を多忙にさせ重症患者治療の妨げになる行為である。

無症状感染者という存在もあるがそちらはどうしようもないだろう。症状がない限り気づきようがないし、周りに感染者が出た時点で一緒に検査して陽性なら活動を自粛してもらうという方法しかない。潜伏期間の長さや無症状感染者がいることから新型コロナが日本に持ち込まれたことは責められるものではない。そんな状況で感染者ゼロというのは不可能だ。有効な対策をどれだけできていたかで評価すべきだが、日本政府は対策以前に現状把握すらできず、情報収集能力と危機管理能力の低さを世界に露呈しただけだった。

経済的影響や法的観点から交通機関の閉鎖はできないし操業停止や学級閉鎖も避けたいという条件で実行可能だったのは入国制限とフライトのキャンセルだったがどちらもきちんと行われなかった。マスクが必要なのは感染者と病院関係者、屋内で長時間不特定多数と接する人でそれはウイルスを広めないためだ。検査のための受診は不要で重症化しそうな人だけが病院に行くべきだ。政府は勇気とリーダーシップを持って「外出後と食事前は手洗い」「一般の方にマスクは不要」「症状がある人は自宅療養」「重症化しそうな人のみ病院受診」といった当たり前のことをしっかり発信していくべきだろう。

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