日本市場に確かな異変が起こっている。日銀が買い入れ基準を変えたのかETF買い入れに及び腰になっているのだ。これは年金と日銀で演出してきた官製相場の終わりを示しているのかもしれない。
株式市場の空気が変わるかもしれない。日銀は年間6兆円を目安として株式ETFの買い入れを行ってきた。今年も残り2か月を切っているがまだ4兆円程度しか買い入れていないので今年は6兆円は未達に終わりそうだ。確かな基準があるわけではないが市場では前場にTOPIXが0.5%以上下落したら日銀がETF買い入れに動くと言われている。基準の変更は今回が初めてではなく昨年半ばにETF買い入れ基準を前場にTOPIXが0.2%以上の下落から0.5%以上の下落に変更したようだ。
驚くべきは日銀が10月9日以来ETF買い入れをしておらず、11月13日にTOPIXが0.5%以上下落したにも関わらず買い入れを行わなかったことだ。基準をさらに上げたのか、株価水準やPER、時価総額などの基準が加わったのかは今後の買い入れから推察していくしかないが、少なくとも日銀が買い入れを減らしているのは間違いない。これが金融バブルを警戒したものなのか流動性の低下を危惧したものなのか日銀の真意を確かめる必要があるだろう。
日銀は世界で唯一株式市場に直接介入している中央銀行として注目度も高いが私はこの政策は大失敗すると思っている。それは株式ETF買い入れが株式バブルを誘発するだけで出口戦略がなく、企業統治の歪みを生み出し流動性の低下を招くからだ。GPIFによる株式保有は今年6月末時点で37.7兆円、そこから株価は10%程上昇しているので約40兆円といったところだろう。一方日銀の株式ETF買い入れは営業毎旬報告によると11月10日の時点で簿価が27.9兆円となっている。含み益を合わせたら30兆円程度と考えられる。
執筆時点での日本株式の時価総額が665兆円なので年金と日銀を合わせると日本株の10%以上が政府機関の保有となっている。年金保険料という原資があるGPIF投資分はまだいいが日銀は30兆円もの大金を何もないところから生み出している。これで株価が上がらないわけがないだろう。たとえ減額してもこの政策を続ける限り残高は増え続け年金を抜くのも時間の問題だ。買い入れをやめたとしても簡単に売ることはできない。日銀が保有している間ずっと民間企業が稼いだ利益を配当として奪い続ける。30兆円の2%として毎年6000億円が隠れた税金として徴収される。業績が悪くても経営陣に問題があってもETFに含まれていれば関係なく買われて口を出されることもない。
それらも大きな問題だが市場参加者にとって一番の問題は流動性の低下だ。売りに出されていた10%の株はなくなり、日銀がこれを続けるならさらに浮動株を吸い上げることになる。元々大口個人や法人同士での持ち合い、ポートフォリオを組む機関投資家などもいるので頻繁に売買される株は市場の何割かしかない。母数が90%になった上にさらに浮動株が減れば流動性の枯渇も時間の問題だろう。大口の買いで暴騰し、売りが殺到すれば暴落する。既に市場の売買代金は細り気味であり日本市場は緩慢な死に向かいつつある。
日銀は購入したETFを機関に貸し出して信用売りさせるという馬鹿げた永久機関のような政策も考えているようだが浮動株が減っていくのはどうしようもない。流動性が低く10%が国有で企業利益が民間に再投資されず国が持っていく株式市場はとても健全とは言えない。金融緩和を20年近く続け国債も株も国が買い取ってしまうような国では金融市場には大きな歪みができてしまう。金利の急騰や株価の暴落といったものがあるまで歪みは放置されるだろうが物事は一旦走り始めれば止めることはできない。世界初の国民を巻き込んだ経済実験が早期に終わることを望む。
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