日本銀行の総括的な検証による量から金利への政策の変更によって信用市場、とりわけ空売り集計の変化が顕著となっている。
2016年7月の政策決定会合で日銀は従来のほぼ2倍となるETF買い入れ増額を決定したがその頃から日本株は変調をきたしていた。日銀のETF購入による下支え期待から株価が下がらなくなり下がっても1日程度ですぐに反騰するといった相場が続くようになったのだ。売りを仕掛ける短期筋がいなくなりきっかけがあっても下がらず固定相場のようになっている。そこに総括検証が加わり政策の不透明感が出てきたことから回転が速く変わり身の早い信用市場からマネーが流出し始めている。まずは信用倍率を使った指標を見てみよう。
上図は信用倍率と社内対当を掛け合わせたものだ。これについては社内対当に異変に詳しい説明がある。アベノミクス初期には7倍を超え去年までは5倍以上を保っていた信用倍率は今年に入ってから低下を続け現在は3倍を下回っている。これは信用買いが減ったためで信用売りはそれほど変動していない。この指標は相場の盛り上がりとともに上昇するがピーク前には低下をはじめサイクルの終わりとともに低下を終了する傾向がある。この点から見るとアベノミクスは確実に終わりに近づいていることがわかる。今はカウントダウン期間といったところか。これは以前から指摘していたが最近は空売り市場を見ても変化が明確になってきたのだ。空売り集計の見方については空売り集計を読むに記載があるので詳細は省く。3つのグラフを順に見ていこう。
一つ目の空売り比率は今年に入り40%台で高止まりしているのがわかる。アベノミクスではずっと上昇傾向だった空売り比率はついにピークを迎え上昇をやめた。だがこのグラフからはそれ以上のことは読み取れない。そこで今度は実売りと売り注文合計の推移を見てみる。
売り注文金額合計も減り始めているがそれ以上に実売りの減少が目立つ。この実売りの減少が空売り比率上昇の原因だ。つまり株を売っているのは主に空売り勢で彼らはどこかで買い戻しを迫られることになるがそれは株価が大きく下がった後となるだろう。実売り注文は低調で株主はそれほど変動していないようだ。最近貸し株サービスが再び注目されているが金利の高い株は借り手にとっては売りたい株で素人から借りて株価が下がってから返すというのがその実態だ。最後に見るのが価格規制ありとなしの空売りの推移だ。
ざっくり言えば価格規制ありというのは大口の売りで価格規制なしというのは小口の売りだと思っていい。総括検証後に一番変化しているのは価格規制ありの空売りでこれが9月に入ってから急落している。この傾向が今後も続くなら相場は間もなく下落を始めるだろう。今はキャッシュポジションを増やし様子見をして価格規制ありとなしの空売りが同程度の水準になるのを待ってから再び参加するのが慎重で賢い投資といえる。
今年になってから信用市場には目に見えた変化が起きている。今後もこれを注視し投資機会を逃さないようにしたい。
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