現状において警察の拳銃は犯罪の抑止力というより警察官の自殺の道具となってしまっている。警察官の拳銃使用に対する市民の理解を深めて必要なら法改正もして正しく運用されるようになってほしい。
警察官による拳銃自殺のニュースをよく耳にするので気になって調べてみたところ、網羅的な統計は見つけることができなかったが少なくとも毎年一人は亡くなっているようだ。警察官による発砲についてもきちんとまとめられたものは見つけられなかったが警察官の発砲件数は年に数件、射殺となるとそれ以下だ。警察官が犯人を射殺となると大騒ぎするのがメディアだが警察官に悪意や過失があるならともかく発砲それ自体を責められるべきではないだろう。アメリカのように撃ちまくるのがいいというわけではないが拳銃の適正使用についてはもっと啓蒙したほうがよいと思う。
日本で警察官の発砲が極端に少ないのはまず警察組織が発砲をよしとしていないのが背景にある。たとえひっ迫した状況でも拳銃を抜いたら「負け」で、話し合いで解決できなかった無能な警察官として出世コースから遠のくと感じられるような空気がある。適正な使用でも始末書を書かされ叱責されるなら使いたくもなくなるだろう。これは組織内部の問題だ。
一方で市民の目というものもある。若い人ほど警察官の拳銃使用に肯定的な意見が多くなっている気がするがこれは近年のコンプライアンスの強化や世相や治安の向上といったものがあるだろう。逆に警察不信のある世代は戦前の言論弾圧や予防拘禁制、戦後の安保闘争などで公権力と対立するのが正義のように思われていた時代と関係しているのではないか。不祥事が減り地道な地域活動などで警察への好感度が上がっているのかもしれない。これは災害派遣で活躍している自衛隊にも同じことが言える。
そのような時代の変化で拳銃の適正使用を後押しする世論は整いつつあるように思う。警察官の拳銃は正義の執行の象徴であるべきで、抑止と制圧の手助けとなるのが本来の姿ではないか。ところが実際は警察官の拳銃自殺の件数が犯人の射殺件数を上回っているという異常事態だ。これでは拳銃は自殺の道具と言われても仕方がないだろう。持っているが使えないのであれば抑止力にはならない。核兵器はそのような運用となっているがそちらは使わないだけであって使えないわけではない。
簡単に持ち運べる拳銃は盗まれて悪用される危険もあるし実際に警察官が拳銃を盗まれる事件も起きている。抜けない使えないという運用を改めて犯罪の抑止と犯人の制圧という正しい目的のために使用できるようにすべきだろう。妨げとなっているのは警察組織の問題と法律の問題がある。なるべく使わないようにというのは理想としては望ましいが必要であれば躊躇なく使うことも推奨する空気にならないと適正使用はされない。もう一つは正当防衛の要件という問題だが少なくとも相手が武器を所持していて市民に危険が及ぶ可能性がある場合は許可をしてもよいのではないか。
安倍政権では解釈改憲、菅政権では日本学術会議に関して法解釈変更と正当な手続きを経ずに運用を変えることがまかり通っていたが拳銃使用の要件を変えるのであればきちんと議論して必要なら法改正をして広く国民に伝わるよう努力すべきだろう。現状の正当防衛の要件は厳しすぎるように思う。いつどのような状態なら拳銃使用が認められるのか、使用前の手順の簡略化など変えていける部分はあるはずだ。
凶悪犯に対して警察が銃を持って立ち向かうことに反対する人は少ないだろう。人質を取られて盾にされることもあるかもしれないが通り魔や立てこもりなどそういった事態が想定される場面はある。犯人に逃走の恐れがある場合はどうか。激しく抵抗され警察官の身に危険が及ぶ可能性がある場合、車やバイクで逃走された場合など、考えられる場面は多くある。それら一つ一つを丁寧に検証していって国民の理解を得られれば「こんな場面では拳銃を使用します」と警察から広報して抑止力とすることもできるだろう。
拳銃が自殺の道具となってしまっているのは嘆かわしいことだ。自殺に関しては警察内部での問題なので体育会系で上下関係の厳しさやノルマやパワハラなどときちんと向き合ってもらって自浄作用に期待するしかない。拳銃そのものはただの道具で使い方を決めるのは人間だ。凶悪犯と対峙した時に拳銃があればなんと頼もしいことか。必要なら使える環境が整っていればもっと抑止力が期待できる。射殺より自殺が多く、警官による発砲件数も異様に少ない現在の状況は健全とは思えない。
欧米のようにするのがいいとも思わないが拳銃使用それ自体が悪とされるのには抵抗がある。使える場面、使ったほうがいい場面での使用がためらわれる現在の状況は好ましくない。警察内部の改革、一般市民の意見、根拠となる法律という部分から考えていって犯人に立ち向かう警察官が拳銃を使用しても責めを負うことなく職務を遂行できるようにしていくべきではないか。
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