2021年1月26日火曜日

アメリカの財政政策はインフレ解明の一助となるか

 お金の流通量が増えればインフレは起きるのか?アメリカがこれまでに類を見ない速度でマネーストックを増やしているので今後の物価動向を注視したい。


新型コロナによる市場暴落後世界各国の政府は壮大な社会実験を始めた。GFCすなわち2008ー2009年の金融危機後の対応とは文字通り桁違いの金融緩和に加え、財政政策でも未だかつてない大盤振る舞いをしている。この財政政策のインパクトは絶大で、金融緩和では全く増えなかった世の中に出回っているお金の総量であるマネーストック(M2)が激増している。上のグラフを見ればその影響の大きさがわかるだろう。

2019年末に15.3兆ドルであったマネーストックが2020年末には19兆ドルと4.3兆ドルと率にして24%も増加した。1ドル100円で430兆円もの現金がアメリカ経済に流れ込んだのだ。この増加したお金は金融市場で消化されているようで今のところ顕著なインフレの兆候はないが、お金の流通量とインフレ率になんらかの関係があるならこれから物価が大きく動いても不思議ではない。

裏付けのないお金の量が急に24%も増えたのだから同じ金額で買えるモノやサービスの量は減っているはずだ。給付金や失業手当といったものは言わばヘリコプターマネーそのもので突然降って湧いたお金だ。増えた分のお金が金融市場で回り続けインフレとはならないのか、それともお金の価値が低くなった分物価が上がるのか?どうしてインフレが起きるのかはまだわかっていないがこのM2の急増によって何か教訓が得られるかもしれない。

金融緩和はマネーストックの増加に寄与しない。それはこれまでの結果から明らかで20年近く緩和を続けている日銀がマネーストックを顕著に増やせていないことからもわかる。金融緩和で増えるのは銀行が貸せるお金だが銀行は貸し出さないのだ。低利で無理に貸し出しても採算が合わず貸し倒れの危険もある。一方で財政政策によるバラマキは直接マネーストックを増加させる。これは前回の金融危機と決定的に違うところだ。リーマンショック後も金融緩和をやめられず11年経ったところでこれまで以上の緩和と市場への直接介入という新たな手法で金融市場は大賑わいだが金融政策と財政政策を正常化できる国が今後出てくるのかは未知数だ。

無限に金融緩和を続けても大丈夫なのか?過度な低金利による事実上の財政ファイナンスはどこまで成り立つのか?政府と中央銀行は市場に急かされるままに欲しがるものを与え続けているがどこかに落とし穴があるかもしれない。顕在化してくる副作用を見逃さないようしっかり監視しておくべきだ。

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