2019年10月1日火曜日

電子マネーの失策 客の目線になれない日本企業

電子マネーで消費者は損をするので損得で見れば普及させないほうがいい。国は国民の負担を増やそうとしている。キャッシュレスはカードで十分で日本企業にはそれを超える決済手段は作れないだろう。必要なのは使う人の立場になって考えることだがそれができる企業文化は日本にはない。

3年程前に利権まみれの電子マネー また外資に敗れるのかで国内で利権争いをしている間に外資に入られて総取りされてしまうことを危惧したが、現実は斜め下を行っていた。タッチレス決済より利便性に劣る規格であるQRコード決済サービスが乱立し、国がキャッシュレスに補助金を出すというわけのわからない事態になっている。このぐだぐだにしてうやむやにするのはもはや日本の文化なのかもしれない。

まず、キャッシュレス化を推進しても国民は得をしないと言いたい。導入コストに維持費がかかり、さらに使うたびにかかる決済手数料が最終価格に上乗せされる。得をするのは現金流通コストを下げられる銀行、ATM事業者と電子マネー運営者だけだ。そもそも、「お金」を「お金のようなもの」に変えたい人などいない。キャッシュレス決済が普及するには消費者にとってのメリットが必要なのだ。

クレジットカードを例に考えてみよう。確かにカード会社は手数料を抜いておいしい思いができるが、保障サービスをつけたり回収代行をしている。お店は取りっぱぐれがなくなり、消費者は分割返済ができる。お店も消費者も手数料を負担した代価を得られるのだ。今流行らせようとしているなんとかペイにはこれがない。新しい価値を提供できていないのだ。例えば特定の商店街だけで使える「商店街マネー」5000円分が5250円(250円は手数料)で買えたらあなたは買うだろうか?

革新的なものができる背景には必ず世の中を便利にしたい、新しい価値を提供したいという動機がある。スティーブジョブスはPCのように色んなことができる携帯電話が欲しいと思っていただろう。ジェフベゾスは何でも売っていて気軽に買えるネット通販を求めていただろう。日本の会社にはそれがない。革新を生むであろう、よりみんなが欲しがるものを作りたいという動機がないのだ。電子マネー参入も動機の根っこの部分が腐っている。「会員」を集めて手数料で儲けたい、中間搾取をしたいということしか頭にないのだ。

電子マネーにも付加価値という対価があれば布教などせずとも勝手に普及していくだろう。例えば、偽札を掴まされるぐらいなら電子化されたお金がいいという需要があれば電子マネーは普及する。中国がそうだろう。消費者も電子マネーなら路上でスリに狙われる心配も減る。だが、今の日本で偽札やスリや路上強盗の心配がそんなにあるだろうか?夜中に一人で出歩いても襲われることの少ない国だ。治安が悪く偽札が蔓延している国でもなければ電子決済は余計なコストになってしまう。

今の日本では現金決済が一番安上がりということだ。ミドルマンを入れて中間搾取を許すほどのメリットは日本の電子マネーにない。客は現金を持たずによくなり支払いにかかる時間が2/3になるかもしれないが電子マネーは使える店が決まっている。店は中抜きをされるだけでキャッシュレスにすれば店員がいらなくなるわけでも客が増えるわけでもない。電子マネーが消費者にとって手数料分の値上げに見合う対価があるとは思えない。

仮に決済手数料を5%としよう。消費税も考えない。現金なら100円で買えるものが電子マネー対応店だと108円(導入維持費込み)のようになってしまう。中抜きの負担は最終的には店の利益か消費者の財布から負担するしかないのだ。国民もバカではない。納得できる対価がない限りこんな暴利を喜んで払おうという人はいないだろう。そうなると電子マネーはポイントカードと同じ囲い込みの手段でしかない。ポイントカードと同じようにたくさんポイントが付くなら使う、めんどくさければ使わないとなるだけだ。今は国と企業の販促費で還元があるがそれがなくなればただの中間搾取の道具にしかならないだろう。

そもそも日本においてはクレジットカードのビジネスモデル自体に問題がある。日本の消費者は賢すぎるのだ。なんでもかんでもクレカで分割返済リボ払いが当たり前、なんて国とは違って日本人は全体として借金を好まない。家計簿が当たり前にあり支出を把握している人が多い日本では金利で稼ぐことが難しい。必死にリボ払いを勧めてくるのはそのためで、クレカ一括払いはカード会社にとってはおいしくないのだ。日本ではカードの決済手数料が外国より高くそれがクレカ対応の障害になっているが、金利で稼げないからその分を店からむしり取るためにそうなっている部分もある。現金と治安に信用があればカード会社はなくてもいい、ということだ。

日本は元々交通系ICカードやおサイフケータイなど非接触型決済で先行していたし中国からサービスを逆輸入した形になるQRコードだって日本の技術だ。国産ロケットだって飛ばせる技術を持った人がいる。アイディアの元はたくさん持っているのだ。ただそれを活用することができない。それは政治や企業文化の問題だろう。突き詰めると日本人は「集約」することが下手なのだ。iPhoneなんて日本でも作ることはできたはずだ。既にある技術を集めて組み立てるだけだ。かと思えば東京のように世界でも稀な一極集中の都市を無計画に発生させてしまう。都合よく欧米が~北欧では~と言ってみたりするが国としての在り方が違うのだ。全体をよく見なければ判断はできない。

この国ではビジョンを持った人がそれを実現するハードルが高いのか?交通機関で各種電子マネーやクレジットカードを使えるようにするのはそんなに難しいのか?専門家に専門性を求めない日本で日本人が妄想する万能の天才像について書いたが日本人は考えることが苦手だ。天才は何でもできて凡人は言われたことをやる。そんな世界でいいのか?だが日本の場合きちんと民主主義が根付いたことがなく自分の頭で考えるより誰かに結論を与えてもらいたい人が多い気がするので独裁者、あるいは独裁気質を持った人が治めたほうが上手くいくのかもしれない。

閑話休題。電子マネーの利便性を考えたらQRコードより非接触型だろう。スマホを取り出してアプリを立ち上げるのは面倒でスマートでないしアプリもアカウントもない外国人が使えずユニバーサルではない。チャージが必要なのも不便だからダメだ。たとえオートチャージができたとしても「お金」を「それより不便な何か」に変えたくはない。ということで消去法により個人的に使ってもいいと思えるのは非接触型でアプリもチャージもいらないもの、すなわちNFC決済だ。ICチップの付いたクレジットカードかデビットカード、またはクレカ連動させたApple PayやGoogle Payが一番ということになる。

考えてみれば電話会社やアプリ会社、流通グループや鉄道会社よりもお金を専門に扱う銀行やカード会社のほうがその部分で信頼できるのは当然だ。ICチップが導入されたのもスキミング被害を防ぐためで、カード会社は不正使用チェックや個人認証でも一歩先を行っている。お金のことは金融サービスを専門にしている金融系に任せるというのは当たり前の結論だろう。なんとかペイは不便なだけで、政府がそれに加担しているのも増税を機に制度を複雑にして中抜きできる場所を増やしたいだけだろう。この国はどこまで行っても利権と既得権益ばかりだ。

キャッシュレスの決済手段はVisaとMastercardさえあればいい。合理的に考えればそうなる。外国でも使える、外国のATMで外貨を下ろせる、付帯サービスもある、後払いできる非接触型決済。日本での加盟店は決して多くはないがキャッシュレス決済の中では一番多い部類だろう。その取扱いさえしていれば外国人も日本で使える。カード会社を持ち上げるわけではないが日本はこの分野の争いに既に負けているのだ。カード決済を超える便利な手段があればそれこそ革命的なので覇権を握れるだろうが上記の全てを満たしそれ以上の利便性を与えられる決済手段を私は知らない。

国がこの分野を後押しするとしたら現金流通コストの減少分がキャッシュレスに係る費用より大きい場合のみ正当化できるがそうでなければ国民の負担が増えるだけだ。現金は減らず流通コストはそのままで電子マネー運営者が上澄みを掠め取っていくだけなら消費者はそれが上乗せされた価格を支払わなければならなくなる。現状電子マネーは消費者にとってメリットが少なく負担にしかならない気がしているが軽減税率といいこの国にはコスパという概念はあるのだろうか?利権のためにあえてやっているように思えてならない。

電子マネーは損だ。それに見合う利便性もない。メリットがあるものならば消費者は勝手に取り入れる。現在の日本なら現金が一番安上がりなのだ。クレジットカード、デビットカードの劣化版をいくら作ってもしょうがない。カードも手数料に見合う対価があることを納得して賢く使うべきだ。新しい価値を提供するにはビジョンを示せる人とそれを実現させるために支えられる人が必要だが日本の企業にそれを求めるのは難しいだろう。

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