他国に対して輸入制限や追加関税を示唆するトランプ大統領が保護主義と糾弾されているがその非難に正当性はあるのだろうか?率直でオープンなトランプともっともらしいことは言うが実行力はなく現状維持が好きな他国首脳、どちらが世界の人々にとって利益となるのかよく考えてみたい。
G7は「保護主義と引き続き闘う」と立派な声明を出したがトランプはそれを承認せずサミットは物別れに終わったがでは保護主義とは一体何なのだろうか。自国の利益保護はどの国も行っているがそれが保護主義にはならず関税の引き上げや輸入制限措置を課すことが保護主義になるのなら最初にルールを決めた時により閉鎖的だった国が有利となるが保護貿易をしている国がより開かれた国を糾弾するのは不公平だ。
G7は「自由で公平かつ互恵的な貿易」を目指すと謳っているがどの国同士でも自由貿易が実現したことはないし積極的にそれを目指そうとしたこともない。各々得意な分野では相手国に関税撤廃を迫り、苦手な分野では高い関税で自国産業を守ろうとしている。WTOは機能しておらず元々の制限を厳しくしていて規制緩和の余地が大きい国々が得をしているのが現状だ。各国の貿易収支は恒久的な黒字か慢性的な赤字であることが多く、そこにあるのは保護的で不公平かつ搾取的な貿易体制だ。
G7は保護主義が「どの国の利益にもならない」と声高に叫んでいるが報復措置、すなわち追加関税や輸入制限は保護主義にはならないのか。保護主義はよくないが報復措置はよい。自由貿易はしないが貿易戦争はする。右の頬を打たれたら左の頬を打ち返しなさいという教えか。先進国とは綺麗事好きで大言壮語を繰り返す二枚舌のダブルスタンダードな国々の集まりなのかもしれない。持つ者が持たざる者に不条理を押し付け理を説く世界。貿易問題も人道主義を掲げながら安く移民をこき使う社会構造と似たものなのかもしれない。
貿易の不均衡を是正しようとするのは保護主義なのか?例えばA国は低い関税率、B国は高い関税率という状態でA国が慢性的な貿易赤字を抱えていてB国に関税率の引き下げを要求したが一向に相手にされなかったため自国の関税をB国並みに引き上げた場合、それで不均衡が是正され公平になるとしてもA国は保護主義と言われてしまうのか?B国は保護貿易をしているのに現状維持なら問題はなく現状を保護的に変更する政策だけが保護主義なのか?
トランプは中国に対してもロシアに対しても北朝鮮に対しても率直でオープンだ。中国との間に貿易摩擦があることを伝えるとともに制裁措置を課したり、ロシアのサミット復帰を提案したり、制裁をかけつつも北朝鮮と米朝首脳会談にこぎつけたりしている。貿易問題でいきなり関税や輸入制限をかけるなどやり方は強引かもしれないがトランプは率直かつオープンで実行力があり、曖昧な声明でお茶を濁して一向に行動しない政治家よりは問題解決と真摯に向き合っていて全うに思える。
農産物に莫大な関税をかけガチガチの規制で非関税障壁を作り自国の通貨安政策を導入しながら自由貿易の旗手を名乗る白々しい嘘つき国家と率直かつオープンなコミュニケーションと多少荒っぽい力技で圧力をかけ問題解決を迫る国家、どちらがより信用されるだろうか。ファーストネームで呼びゴルフをすることで親しさをアピールするが相手には上手くかわされ一向に成果を上げられない政治家としっかりと要求を突き付けてくるが約束をすればきちんと守り直接的でぶっきらぼうだが話は聞いてくれる政治家どちらが有能だろうか。
トランプは直接的な要求と圧力でディールを目指し、甘言と苦言というあめとむちを駆使する厄介なビジネスマンでありオーソドックスな政治家ではない。だが口癖は「検討します」で言い訳言い逃れはぐらかしは当たり前、何かあれば「秘書がやった」とか「記憶にない」と伝家の宝刀を抜くどこかの国の政治家と比べればよっぽどマシであろう。
多額の公金を使いながら毎回大した果実のないサミットを「時間の無駄」と言ったトランプ大統領。少なくとも現状を打破しようとしているのはトランプなので合意だけして何も変えない変えられない理念法のようなG7を不満に思うのは当然だろう。変わる結果がどうなるのか予想が難しいのがトランプ流なので手放しに称賛はできないが国も社会も階層が固定されつつある既存秩序に対する挑戦自体はよいことだと思う。言葉のみに惑わされることなく誰が何をしたか、その結果どうなったかを注視したい。
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