2019年3月12日火曜日

物事は風化する 学んで活かすことを重視すべき

東日本大震災から8年が経ち震災を「風化させない」という空気があるが人間にそんなことはできない。嫌なことは忘れて次世代には渡さず、残すのは事実のみにしておくべきだ。事実を継承するためには制度が必要で、それは取捨選択をして現実的なレベルでなければならない。

石碑はずっと建っていた。津波がここまで来たと示す石碑があっても人は忘れてしまう。それが人間だ。人間の記憶には制限があり、何もかもを記憶しておくことはできない。過去の大きな出来事を全て覚えておくことも不可能で、それをさせようとするのも合理的でない。語り部は感情には訴えるかもしれないがそれで将来の危機を避けることはできない。未来を想うのなら記憶より記録で、感情に訴えるより現実的な案を実現させて強制力を持たせるべきなのだ。

原爆投下と大日本帝国の終戦に関しては学ぶ機会も多く日本では未だ終戦の日に黙祷を捧げているが、ではそれより過去の戦争はどうか?関東大震災は?宝永の大噴火は?記録に残っている過去の大津波は?どこまで振り返りどこまで追悼すればいいのか?すべてやっていては生活もままならず過去を体験していくだけで寿命が尽きてしまう。個人の体験を継承することに意味はなく、思い出しても何にもならない。語り継ぐより記録して歴史に学ぶべきで、学ばせるには個人の意識を変えても不十分なので国主導で制度化すべきなのだ。

事実を記録するのが一番大切で、記録したものを活かすには制度が必要ということだ。東日本震災を教訓にするならば、それは災害時の避難方法を周知しておくことであり、災害対策マニュアルを作り災害に備え考えることであり、低地には家を建てないことである。ただし実行するには案が現実的でなければならない。法律で危険な場所での住宅建設を禁止することはできるがやり過ぎれば住める場所がなくなってしまう。なので低地住宅禁止は現実的ではない。

津波と原発事故で想定外が続いたので想定外を想定しようと基準値がインフレしたりしているが、なんでもかんでも想定すればいいというものでもない。首都直下型地震と富士山噴火を想定しても完全な対策は不可能だ。どうしようもないこともある。例えば巨大隕石が落下すれば粉塵で日光が遮られ作物が育たなくなり人類は壊滅的な打撃を受けるが根本的な対策はない。イエローストーンが大噴火しても人類の危機だが一体人間に何ができるのか?自然は人間より強い。できることをできる範囲で実行し、人知の及ばないものは諦めるしかない。地球にも太陽にも銀河にも宇宙にも寿命があり、未来に人類が滅ぶことは決まっている。そこまでの道のりを苦の少ないものにするための武器が事実の蓄積と実現可能なアイディアだ。

復興という言葉もおかしい。復興の名目で25年も増税をされることが決まったが、人口減少で国力も下がっていくなかでどこまでやれば復興となるのか。死んだ人は戻ってこないし震災がなかったとしても東北の過疎化は進んでいただろう。街からは人が消え増税の事実だけが残る。現実的に考えれば過疎化が進む地域を無理に復元しようとするよりは残った人たちに他へ移り住んでもらって土地は集約して農業工業など他のことに利用すべきだろう。だが現実には復興の名目で津波対策をしたり効果的でない方法で除染をしたり懲りずに新たな住宅を建てたりと「衰退する国のこれから」を考えるよりも「はい復興しました」とアリバイ作りをしたいかのような政策が行われている。

空き家放置は反社会的行為 負動産は国が対策すべきにも書いたが国力が衰退している日本では適切な国土管理が必須であり震災を学びにしてこれをもっと進めることもできたはずだが西日本豪雨や熊本地震の例を見る限り国が強制力を持って安全対策をすることはなさそうだ。東京では江東5区で大規模水害が起こるとされているがこれが起きて犠牲者が出ても瓦礫を撤去してまた家を建てるのだろう。この国の都市計画は壊滅的だ。都市に限らず計画性がなくそれが今の人口減少と格差の拡大につながっているが話題にはしても学習はしないのが日本のお国柄なのか。

物事は風化していくものだ。感情だけ残しても後世に伝わるはずもなく、そこに訴えた教訓も形骸化するだけだ。事実を記録し、きちんと理由をつけてからある程度強制力を持った制度を遺してこそ偉大な先人だったと言える。覚えていても繰り返すのだから忘れていても防げる仕組みが大事なのだ。学んで活かすにはそれをする機会と考える作業が必要で、「忘れないようにしよう」という掛け声だけでは何も解決しない。過去の悲しみから学び未来志向で実現可能な政策を考えて実行していくことこそが政治であり真の復興であるが今の東北の景色を見てそれがなされていると言えるだろうか。亡くなった人たちのためにも形だけの復興ではなく今生きている、そしてこれから生きていく人たちの幸せを第一に考えた政策を進めてもらいたい。

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