空き家を放置することは土地の有効利用を妨げ国の生産性を下げる反社会的行為だ。それを許している不動産制度の失敗は日本衰退の遠因にもなっている。衰退の痛みを和らげるためにも適正な国土管理が求められる。
2018年は西日本豪雨をはじめ様々な災害が起き、改めて国土管理の大切さを思い知らされた年であった。出生数も92万人と100万はおろか近いうちに90万人すら割れそうな勢いで減っており、出生率の急激な減少は予期していたもののそのペースの速さには驚いている。過疎化が進んでいる地域で災害が起きた場合復興は不可能で国土の打ち捨てが現実となってきた。国力が下がっていくのは既定路線として今回は空き家と負動産対策という観点から政策を考えてみたい。
空き家は危険だ。長年放置されれば倒壊の恐れがある。放火されれば隣家も燃える。逃亡犯や不法滞在者が住みつくかもしれない。空き家放置は治安の悪化に直結するのだ。危険な空き家が増えればスラム化が進み最終的にはゴーストタウンになってしまうかもしれない。空き家に加え過疎地には売るにも売れずただ固定資産税を取られ続ける負動産も多い。さらには不動産登記制度の失敗で保有者が不明であったり関係者が増えすぎて相続が難しいこともある。どれも国が主導して対策しなければ進んでいかないものだ。
人口減少によって日本がどうなっていくかは衰退する日本経済には国土管理が必要にも書いたが一言で言えばコミュニティが破壊される。少子高齢化で過疎化が進み貧富の差も広がり二極化し階層が固定される。これらを完全に防ぐことは不可能だがコミュニティの再構築を行うことで軟着陸させることはできる。具体的には居住実態による固定資産税率の変更、空き家の積極的解体、国による有効活用のできない土地の買い取り、国土のエリア管理などが必要だろう。
固定資産税の見直しは空き家を作らせないための政策だ。居住している不動産の固定資産税は下げてもいいくらいだが、居住実態のない家の固定資産税は大幅に上げるべきだ。住宅は人が住むことに使うべきであって物置や別荘代わりに使うべきではない。「思い出がある実家は売れない」、「たまに使う」などで古い家を手放さないのは自由だがそれはそこに住みたい人から住む機会を奪い、地域の治安を悪化させる行為でもあるので割高な固定資産税はやむを得ないだろう。空き家バンクというものもあるが住まないなら売るべきでそれを貸し出すというのはおかしなことだろう。
それと同時に古い家屋の解体に補助金を出すことも必要だ。更地にすると固定資産税が高くなるからと空き家を放置するケースがあるがこれも非居住不動産の固定資産税を上げて解体に補助金を出すという二重のインセンティブで減らすことができるだろう。土地を眠らせておくことは国にとってマイナスなのだ。不要な空き家解体を推奨することで往来に危険をなくし地域の景観を守ることもできる。
空き家であろうが更地であろうが需要がない土地は売れない。負動産は国への寄付もできず土地所有者は延々と税金を取り立てられるだけの不平等な負債となっている。こういった事案が発生することは自由な土地取引を妨げる。売れず、活用もできず、永劫お金を吸い取られるだけの土地があるとなっては土地所有を考えている人も二の足を踏んでしまう。そんな時に国が買い取る制度があれば冒険的に土地を利用してみようという人も出てくるし、国が買い取った土地に需要があるならばまた売り渡すこともできる。重要な土地や活用できない土地を個人が所有していたり、固定資産税は取っているが所有者がわからなかったりと、国が必要な管理を行っていない現状は異常だ。地権者や借主の権利が強すぎるのは是正されるべきだろう。
民間の活用できない土地は国が管理し、需要がある土地は民間取引に任せる、それは当たり前のことだ。そうしなければ合理的な土地活用は行われない。土地を利用せずに放置するのは国の失敗なのだ。土地の適正利用を推し進めていくにはエリア管理が必須となる。まず居住区はもっと限定すべきだ。日本には「都市」という概念がないのか何もかもがまばらだ。都市計画が稚拙で場当たり的な開発を繰り返してきたことが原因だろう。欧米では大抵「街の中心」と言える場所があり全てはそこを中心に都市が設計されている。何もないから郊外なのだ。
居住区をしっかり定めることによって空き家の点在を防ぎインフラコストの増大も防ぐことができる。現在も市街化調整区域など規制はあるがもっと抜本的な見直しをしなければ負動産は減らない。大きく分けるならやはり居住区と非居住区だろう。そこをしっかり分ければ住宅が豪雨で沈んだり土砂災害に飲まれたり液状化で被害を受けたりすることは未然に防げる。規制がないから犠牲が生まれる。その他の土地は産業区、自然区などとして事業や農林水産業や災害対策に使えば空き家も減らせて被災も防げる。居住区の土地は売れるので使わなければ手放せるし活用できない非居住区の土地は国が買い取ることで負動産も減らせる。負動産も集約すれば使い道が生まれることもあるし必要ならエリアの見直しもすべきだ。
土地取引が滞り供給が減ることによって地価は高騰する。地価が高過ぎることによって都市部では土地の切り売りや狭小化が進んでいるような印象を受ける。買える使える土地が少なければそうなっていくのは当然で空き家と負動産は放置しておいていい問題ではない。土地購入時にはなるべく立地がよく利便性が高く制限のない土地を買いたいものだがそういう土地こそ大切に住み相続していくべきものだ。少子化が進んでいるがだからこそ学区も重要で学校があればファミリー層が集まる。学区も行政が決めるものでこういったこともエリア管理の一端となる。
空き家と負動産の放置は日本の衰退を加速させる。使わない土地は使いたい人に売り、使えない土地は国が集約する。そのためには登記制度や固定資産税の見直しと空き家解体の推奨、都市計画の練り直しといったものが必要となってくる。日本のように実行力がなく決められない国でそれらが実現される望みは薄いが個人でできるヘッジはしておきたいものだ。
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