これは中長期(数ヶ月から数年)で20%程度のリターンを目指すトレードアイディアで円ベースではないのでキャリートレードの影響を受けないのが特徴だ。余裕資金でポジションを作って放置するのがよいだろう。
現在歴史的な高値にある通貨には米ドル(USD)豪ドル(AUD)NZドル(NZD)がある。米ドルは言わずと知れた基軸通貨で取引しやすいが面白味はない。オセアニア通貨は金利が下がった後も通貨は強いままだ。どの通貨も強いが金利サイクルに目を向けてみると米国は利上げ志向で金融引き締め気味、オセアニアは中立ないし将来的な利下げがあり得る状況だ。かつては高金利通貨と言われたオージーとキウイだがもはやこれらは高金利ではない。かつて金利につられ今は惰性で積み上がったキャリーが崩れれば大きく下落してもおかしくない。オセアニア通貨は売りたい通貨なのだ。
オーストラリアは鉄鋼石炭などの資源、ニュージーランドは酪農と業種は違えども輸出依存で中国頼みなのは変わらない。さらにはどちらも外国人が不動産を買いあさる住宅バブル状態である。経済規模やオーストラリアの子分であることを鑑みればより外的要因により弱いのはニュージーランドだ。ニュージーランドは家計債務も高騰していて政権交代もあったばかりだ。新政権は外国人の不動産購入禁止や中銀にインフレの安定と雇用の最大化のデュアル・マンデートを求めて右傾化していてNZドル安志向もある。売りやすい環境は整っているといえる。
だが長期の売りとなるとスワップの支払いが問題となる。それを解決するのが新興国通貨だ。高金利の新興国通貨と合わせることによってスワップを受け取りにするのだ。現在取引しやすい高金利新興国通貨にはメキシコペソ(MXN)、南アフリカランド(ZAR)、トルコリラ(TRY)があるが実質金利がプラスなのはペソとランドだ。トルコはインフレ率が金利以上に高く、持っていれば金利よりもインフレによる毀損のほうが大きい。ドル高で疲弊した新興国経済だが世界的な金余りで最近は再び投資先となり始めており人口増加と経済成長が期待できる新興国は長期的には買いでありドル高是正局面になればより注目が集まるだろう。
現在NZD/MXNは13.2程度、NZD/ZARは9.7程度で推移している。すぐに水準訂正があればそれぞれ9.9や7.8程度までの下落は想像できる。20%程度の根拠はここにある。ただこれはキャピタルゲインのみの想定でインフレ率から見てMXNやZARは対NZDで毎年2-3%程度の減価が見込まれる。だが金利差は5%弱あり減価分を差し引いても毎年2-3%の金利は得られるので名目なら5%、実質なら2-3%のインカムゲインを受け取ることができる。インカムゲインで減価に耐えながら水準が訂正されるのを待つのがこのトレードだ。NZDの過大評価が是正されるまで根気よく待ち続けるトレードとなるのでその覚悟は必要だ。リスク分散で両方を売ってもいいし片方だけでもよい。
実際に取引するならこれらのペアは存在しないのでNZD円を売ってMXN円やZAR円を買う合成ポジションとなる。見かけのレバレッジは高いが円売りと円買いが相殺されるので実質レバレッジはその半分になる。売買単位を見て売りと買いが金額ベースで同量となるよう調整することが必要だ。MXNやZAR買いはあくまでもマイナススワップを回避するためでメインとなるのはNZD売りなのでこのトレードはNZDの大幅下落があれば終了となる。タイミングやトレンドの問題はあるが高い通貨を売って安い通貨を買うのは基本なのである程度肝を据えてポジションを持てるならばこれは悪くないトレードだろう。
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