2017年11月2日木曜日

ロイターのコラム 株バブルの危険、日銀はETF購入再考を=河野龍太郎氏

コラム:株バブルの危険、日銀はETF購入再考を=河野龍太郎氏

日銀が株式買い入れを始めて以降株式市場は正常性を失っているがそれを労働分配率、自然利子率の低下といった重要な経済的課題と絡めて批判しているコラムを紹介する。

この政策は極めて異例で実験的だ。世界で最も影響力のあるアメリカの中央銀行であるFRBは株式を買うことを禁止されている。だが日本ではそうした決まりがなく前例もない壮大な社会実験を政権の意向のみで行ってしまっている。日銀は既に日本の株式時価総額の3%以上である20兆円以上を保有しているが結果がどうなるかは誰にもわからない。ただ政治家や中銀総裁が責任を取らないことだけはわかっている。

河野氏の論旨としては「ETF買い入れは株価の形成メカニズムに悪影響があるのでメリットよりもコストが高くなっている今はETF買い入れを縮小ないし終了するべきだ」というものだ。国債や社債買い入れは他国も行っているがそれは債券は満期まで保有すれば償却できるからであってETFは能動的に売却しなければならないので出口戦略の政策コストが高い。政府が株式を永久に保有し続けることは可能だがそれは配当を通じて国が会社から富を吸い上げる行為に他ならない。会社が儲けても利益を国が持っていくのであればその割合が増えるほど投資家離れが進む。この政策をどれほど続けられるかは未知数だ。

そもそも日銀がETFを買っているのはインフレ率を上げるという名目だがいくらリスク資産が値上がっても物価が上がるとは考えにくい。河野氏はインフレ率低下の理由を労働分配率の低下で説明している。労働分配率の低下により会社は利益を貯めこむが労働者には還元されず結果的に賃金上昇が抑制されインフレ率が低下する。労働分配率が下がるのはイノベーションやグローバル化で割高な労働が割安な資本に代替されているからだ。低スキル労働を機械で自動化して生産力が上がれば消費者は恩恵を受けるが労働者は不要になる。アイディアや資本の出し手が利益を総取りできるので労働者への分配は少なくなるのだ。低スキル余剰労働力が減らなければ労働分配率は上がらない。それには数十年かかるかもしれない。

自然利子率の低下もインフレ同様解明された現象ではなく「労働生産性の上昇がいずれは実質賃金や潜在成長率、自然利子率の上昇につながるはず」という日銀の理論は著しく不確かなものだ。そんな中で経済は好調に見え失業率も低い。説明すらできない現象を解決するためにコストが高く前代未聞の政策をあてにしている。これは前が見えないからとりあえずアクセルを全力で踏んでみるというような愚かな行為に思える。

完全雇用での金融緩和は金融不均衡を蓄積する。過剰な金融緩和が実体経済に悪影響を及ぼさなかった例は過去にない。官製相場の終わりがいつかはわからないが悲惨な結果であろうことは想像できる。日銀が保有する株式を市場を混乱させずに売りに出せる未来はあるのだろうか?

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