2020年7月13日月曜日

過去4年のオプションの平均リターン

2016年4月から2020年3月までの日経225オプションを売り建てて毎月1か月間SQまで持ち越した場合の各権利行使価格のオプション平均リターンを算出した。


これはSQ発表直後に期近の各行使価格を売り建ててそのまま放置したらどうなるかという統計だ。SQ算出日の日中終値の清算値を元にマネーネスを計算して次のSQ値で損益を出すという客観的な方法なのである程度再現可能であるというのが特徴だ。マネーネスは同価格帯においてコール側はPーC>0で最小となる価格、プット側はC-P>0で最小となる価格をATMとしている。

まずはコロナ暴落前までの47か月分のデータを見てみよう。行使価格が原資産より1500円以上離れるとオプションが存在しないことがありデータにばらつきがあるのでそれを考慮するとITMプットはどれを売っても150-200円程度で均一、OTMプットは行使価格が下がるほどファットテールにはなるがリターンが下がっていることがわかる。一方ITMコールは1500円程度までは損失が拡大するがそれ以上は150円程度で平らに、OTMコールは1375円アウトでプラスに転じ、1750円アウトを頂点としてファーはきちんと減価している。だが、これに2020年3月を入れると景色が一変する。以下が48か月分のグラフだ。

ITMプットは軒並み数十円程度となりOTMプットは500円アウトを境にマイナスに転じている。いくつかスパイクがあるがこれは2020年3月物で行使価格が存在しなかったためでありアウトライアーとなっている。特筆すべきはコロナ後でもニアプット売りはプラスを維持しているところだろう。4年間ATMプットを売り続けていればコロナ禍でもトータルでは損失となっていないということになる。そして当然といえば当然だがファーがマイナスにはなったがOTMプットは滑り台のような形となっていて、コロナ前では150円から0円へと、コロナ後では20円からー100円あたりへと減価していっているように見える。

コロナを経てどんなトレードが有効かとなると一言で言えばデビットコール、クレジットプットとなるがコロナ前と変わったのはプット側だ。デビットコールは375円アウトを買って1750円アウトを売っていれば4年間で月平均64円とれていたことになる。これは年間で769円となり日経配当の1.7倍程度となる。コロナ前であればどこを売ってもプラスとなっていたプットはATMを売っていれば1年あたり298円のプラスだが外側では毎年数百円のマイナスとなっている。逆に1750円アウトのプットを買っていれば4年間損失を出し続けることにはなるが最終的には2515円のプラスになる。これを4で割れば629円となりデビットコールより140円少ないが屑プット買いもそれなりに有効だったことになる。ATMプット売りとファーアウトプット買いを1:1で取引、つまりかなり離したクレジットプットを持っていれば平均で年間927円の利益だったということになる。

次にレバレッジも含めて考えてみると、デビットコールはインすればプラスとなる損失限定でレバレッジを利かせやすいが、クレジットプットは損失限定ではあるがATMとファーアウトで組むとインした場合損失が大きく膨らむので枚数を増やしにくい。現物感覚でやるならレバレッジを1-2倍にしたデビットコールとクレジットプットのセット、つまり合成先物にフロアとキャップをつけた形になる。これでも4年間で6783円の利益になるので、4年前の株価を16000円とすると22783円で現在の日経平均に配当落ち分負ける程度のパフォーマンスになる。レバレッジ2倍ならコロナでも追証にならず日経を大きくアウトパフォームすることができただろう。

クレジットプットに関しては大外の当たりがめったになく損益が歪であるので売り戦略と買い戦略で分けて考えることもできる。コロナ前であればATMプット売りは年1982円で現物以上のリターンであった。3000円のアウト売りでも240円でレバレッジが8倍であればATMプット売りを超えるリターンだ。1か月で3000円以上下げたのがコロナとGFC、つまりリーマンショック後の金融危機だけであることを考えると損切りできるのであればプット売りは単独の戦略として機能する。逆にプット買いは下手をすれば10年以上報われないトレードとなることもあるので単独では行いにくい。例えば現物との損益通算が可能となればプット買いの損失を配当から引いて還付といった戦略も可能となるが基本的には屑プットを継続的に買うことは投機的な部分が大きいように思える。

実体経済と消費者が大きく傷ついている中でも金融市場は中央銀行の政策による過剰流動性を背景に行って来いとなりコロナなどどこ吹く風となっている。飽和した市場での収益機会が限られ今まで以上にリターン追求の姿勢が強まりよいパフォーマンスを出すのが難しくなっている現在、確定申告が苦にならない環境であればオプショントレードをしてみるのもいいかもしれない。

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