2018年2月1日木曜日

ロイターのコラム 焦点:日銀ETF購入の「出口」、市場が描く5つのシナリオ

焦点:日銀ETF購入の「出口」、市場が描く5つのシナリオ

今後10年以上に渡って投資家の注意を引きそうな日銀ETF購入の出口戦略を考察したコラムを紹介する。

もはや当たり前のようになっているが日本銀行が株式を買うというのは前代未聞でもし成功すれば将来的には各国中銀も真似することになるだろうがそれには出口があることが前提でそれは非常に危ういものである。それはETF購入の直接的な効果は実は株価浮揚ではなく流動性の低下だからだ。日銀が買った分の株は売られないので市場から消えるようなものだ。日銀は既に市場の2.5%もの株式を買ってしまった。機関などの大口や長期投資家は頻繁な売買はしないので浮動株はさらに減少している。

流動性が下がるとどうなるのか。株を買いたい人が多い場合買うことしかしない日銀は株価の上昇を加速させる。逆に株を売りたい人が多い場合日銀は株価に関係なく買うので格好の処分先となり下落をマイルドにする。ただ売りが売りを呼ぶような展開になった場合買い手が日銀しかいなくなり売りを吸収しきれなくなると低い流動性のせいで垂直的な下落になるだろう。どちらにせよこの政策はボラティリティを増幅する装置になる。ボラティリティが一旦上がると手を付けられなくなる可能性があるということだ。

今のところ市場が恐れているのは緩和縮小=テーパリングでETF購入が減額されることだ。これは大きな売りの材料で相場へのインパクトは大きい。参加者が気にするのは時期と額だが日銀も株価下落を恐れているのでおいそれとはできそうにない。おそらくは上限を決めるやり方で最大年6兆円とするなどで対応しさらには未消化額の繰り越しなどで市場を安心させようとするだろう。テーパリング開始までに数年、それから購入停止までに数年としてもこの政策に終わりは見えない。

何とか購入停止まで漕ぎつけたとしても株式は国債と違い満期がないので売らない限り永久に保有し続けることになる。購入停止後すぐに売り出すとも思えないのでここでまた時間が必要だ。売却には大きく4つの方法が考えられる。日銀による直接売却、海外ファンドやGPIFなど特定投資家への市場を通さない売却、企業と協力して自社株買いを使った売却、買取機構を使った売却だ。いずれにしても17兆円もの株式を一度では売れないので売却先と時期を分散させることになる。

立会外分売のようなことをすれば国民の利益を損ねることになるが大量に処分するならディスカウントは避けられない。現実的に購入規模と同程度の速度での売却は不可能なので売却にも時間をかけることになる。単純計算で年1兆円なら17年、年1.7兆円でも10年かかる。ETFを運用しているブラックロックのような資産運用会社や証券会社などでアライアンスを作ってそこに流入してきた金額分を市場からではなく日銀から購入するというのが私の予想する出口戦略だがそれでも手数料なりディスカウントなり払う必要があり確実に儲かるのがわかっているのはETFを取り扱っている会社だ。売値=市価と日銀の簿価との差額は国民の損益となるので国民への説明責任も生じる。損失が出た場合のツケが国民に回されるというのもわかっているのだ。

購入減額、購入停止、売却とETF買い入れにはこれから3つのステップがあるが出口に辿り着くには10年で済めばいいほうで20年以上かかるもしくは永久に保有株式を売れない状況になる可能性もある。国債は大量買入れでマイナス金利も使ってしまい金融危機が起きた場合のツールも枯渇している。インフレターゲティングも機能しておらず従来の金融政策には限界がきているのかもしれない。

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